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金曜時評

民意を将来の糧に - 論説委員 増山 和樹

 「大阪都構想」の賛否を問う2度目の住民投票は、反対が賛成を上回り、大阪市の存続が決まった。巨大な大阪市を再編し、二重行政を解消するのにどれだけの費用がかかるのか、住民サービスが低下することはないのか、市民の疑問や不安を解消できるだけの説明がなかったということだろう。うねりは起きなかった。

 得票数は賛否合わせて136万8825票。投票率は62・35%と前回の住民投票を下回ったが、これだけの数の人々が、自分たちが暮らす市の将来を考えた意義は小さくない。5年後には大阪・関西万博も決まっている。賛否それぞれに込められた民意を府市ともに将来の糧としなければならない。

 住民投票は自治体の問題や首長・議員の解職について、住民が直接意思を示すものだ。本来は議会で議論を尽くして決める事項だけに、結果がしこりを生むこともある。宇陀市では宿泊事業者誘致を巡る住民投票が平成30年に行われ、反対が僅差で賛成を上回った。事業は中止となったが、誘致に前向きだった市議会と反対を表明していた市長(当時)の溝が埋まることはなかった。大切なのは結果を受けてよりよい方向を見いだすことで、その後の議論を萎縮させることがあってはならない。

 大阪市内に多数の県民が通勤する奈良県でも、都構想の行方は高い関心を持って見守られた。松井一郎市長は結果判明後の会見で、「国政政党と大阪維新は分けて考えたい」としたが、市長の任期が満了する令和5年春の政界引退も表明、国政政党である日本維新の会への影響は避けられない。橋下徹氏に続いて松井氏が政界を去った後、誰がどのように同党を率いるのか、政党としての存在感を維持するために、これからの3年間が持つ意味は大きい。

 県内でも維新人気は高い。平成28年の参院選比例代表では、県内投票の2割近い12万1千票余りを獲得、自民党に次いで多かった。翌29年の衆院選比例代表でも、公明党、共産党を上回る8万2千票余りを獲得している。ただ、同党県総支部の清水勉代表代行が都構想否決を受けて語ったように「“松井個人商店”的な体制からどう広げていくか」は県内の維新関係者にとっても大きな課題だ。

 年内の可能性は低くなったが、次期衆院選では、野党統一候補として参院選を闘った前川清成氏が日本維新の会から県1区に出馬する。都構想否決や3年後の松井氏引退もにらみ、県内維新の存在感が問われる選挙となりそうだ。

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