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金曜時評

長期戦にも備える - 編集委員 松岡 智

 新型コロナウイルスの収束は不透明で、経済への影響の先行きも見通せない状況が続く。国発表の景況や消費、雇用などに関する数字も、景気回復が長い道のりであることをうかがわせる。

 県内の経済団体、民間信用調査会社なども今春以降、会員や企業に対するアンケート調査を何度か実施している。それらによれば、売り上げなどで新型コロナの影響が続いている、または今後影響が出る恐れがあるとする企業がまだ9割を超える。また影響が出ている企業では、現在の売り上げなどが緊急事態宣言発出の時期よりは改善しているものの、前年並みには戻っていないと回答する企業がほとんどだ。さらにコロナ以前の経済状態への回復には数年かかるとの見方もあり、今冬以降の休廃業の広がりが懸念されている。

 こうした情勢から、県内経済団体の中には、今の不十分な状態の中でも利益を生み出せる企業体質への変革をうながす動きが、すでに出てきている。自社の財務状況や技術力などを分析し、雇用を守って人材を生かす方法で現状の経営を見直すといった会員向けの勉強会も重ねられている。

 県内で中心となる中小企業、小規模事業者にとって、新型コロナ感染拡大以降のこれまで半年ほどは国や自治体、金融機関からの資金支援などを有効に使い、存続を図ることが第一だった。現在は長期的視点でも経済状況と社業を捉えつつ、借入金の返済も考慮し、自社の特性を再点検しながら体質、方向性の変換も含めた企業姿勢見直しの必要性が一層求められる時期に来ているとも言える。

 そのための伴走者となるのが、従来から企業を側面から支えてきた金融機関や税理士などの専門家だ。今後は従来や平時とは異なるより冷静で、先を見越した助言、寄り添い方が不可欠になる。関係する企業の存亡はひとごとではなく、結局は自らに返ってくる。その間の各企業に向き合う本気度も、またしかりだろう。

 もちろん企業にとって危機の乗り越え方は一時的なものでなく、後々まで影響する。自社が持つ人材、技術力などを十分に把握し、生かし切って危機を脱すれば企業の地力、周囲の評価にもつながり、将来の展望も描きやすくなる。ただ企業存続への思いが過ぎ、人材などへの対応を誤れば、多方面の信用を失う可能性もある。長く緊急時が続き、ともすれば視野も狭くなりがちだが、将来の人材を含め思いのほか周囲から見られていることも心に刻んでおきたい。

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