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金曜時評

「食料自給」向上を - 編集委員 辻 恵介

 コロナ禍の中で輸入品が止まり、マスクやウエットティッシュなど衛生用品の不足は誰もが実感した。食料についても外国産の野菜の輸入が一時的に滞ったりし、あらためて輸入に頼りすぎている日本の現状を浮き彫りにした。

 一方、中東やインドなどで大量発生し、農作物を食い荒らすサバクトビバッタの映像は、目に見える脅威として、見る者に強烈な印象を与えた。こうした自然界における「食料供給を脅かす新たなリスク」は今後も発生する可能性が高い。こうした日本の危うい食料状況を、このまま放置しておいていいはずはない。農作物の自給自足の促進へ向けて、国の政策を大きく変えていくべきではないか。

 政府は6月26日、農林水産業・地域の活力創造本部(議長・安倍晋三首相)を開き、新型コロナによる食料供給リスクの高まりを踏まえ、農林水産政策の展開方向として「食料安全保障の強化」を打ち出した(6月27日付日本農業新聞1面)。「外国産から国産品への原料の切り替えなどによる国内生産基盤の強化」などを検討、国民の理解の醸成を進めるという。

 冷凍食品には、安価な外国産材料が使われがちなので、多少高くても安全な国産材料を使った商品が、流通の中心になるまでは、かなり時間がかかるだろう。しかし、農産物を「自給自足」の形にしていくことは、国の将来を考える上で極めて重要な施策と考える。

 コロナやバッタだけでなく、地球温暖化による猛暑や季節はずれの台風、洪水、干ばつなどの自然災害は、世界中で年を追うごとに頻発。今年の梅雨時に熊本県など列島各地で起きた「線状降水帯」による大雨被害などは、極めて身近なリスクになっている。

 農水省の5日発表による「2019年度の日本の食料自給率」は38%(カロリーベースによる試算)と、過去最低を記録した前年度から1ポイントだけ上昇したが、主要先進国の中でも最低レベルにある。

 小麦など主要穀物だけでなく、果実や大豆など自給率を高める政策を進め、国は財政的にも支援してほしい。農業振興は地方に雇用の場を生み出し、都市部からの若い世代の移住を促進する可能性を秘める。後継者不足を解消し、先祖から引き継いだ農地を耕作放棄地にしないで有効に活用することが求められている。

 輸入に頼りすぎている現状から脱却し、多少高くても国産品を購入するように、消費生活のあり方を、国民みんなで考えて、行動すべき時が来たように思う。

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