金曜時評

住民目線で活用を - 編集委員 高瀬 法義

 文化庁は6月19日、地域の有形・無形の文化財を組み合わせて魅力を発信し、観光振興などにつなげる日本遺産に21件を新たに認定した。県関係では「もうすべらせない!!―龍田古道の心臓部『亀の瀬』を越えてゆけ」(三郷町、大阪府柏原市)など3件が加わり、計7件となった。全体では平成27年度からの累計で104件となり、「100件程度」としていた文化庁の目標に到達。当面新規の認定は行わない予定で、日本遺産は一つの区切りを迎えた。

 日本遺産は、地域の文化財や伝統芸能を“ストーリー”としてまとめ、観光振興などで地域活性化を図る制度。貴重な文化財や自然を後世に引き継ぐことを目的として「保存」を重視する世界遺産と異なり、観光振興や地域活性化など「活用」に重きを置くことが特徴だ。

 第2次安倍晋三内閣発足から間もない時期に構想が打ち出され、インバウンド対策などで文化財活用を狙う政権の強い意向があったとされる。遺産認定されると地元自治体には数千万円から1億円を超える補助金が交付されるため、財源不足に悩む自治体からの関心は高かった。

 しかし、その認知度は思いどおりには上がらず、実際に地域振興に貢献しているかどうか疑問だ。文化庁によると、今年1月に約4700人を対象にしたインターネット調査で「日本遺産」という言葉を聞いたことがない人は30・8%を占めたという。県内でも、県関係の日本遺産を全部言える県民はそんなに多くないだろう。

 地域に点在する文化財をパッケージ化してストーリー性を持たせることで分かりやすくすることが日本遺産の狙いだが、逆に個々の文化財に対する関心や理解を妨げてはいないだろうか。また、活用に偏り過ぎることで、文化財の保護や史実を軽んじる傾向が生まれることも危惧される。

 とはいえ、地域活性化には観光客をはじめ交流人口の増加は不可欠であり、文化財がその強力な武器になるのも事実だ。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ県内の観光客増加に向け、日本遺産のブランド価値向上が求められる。

 そのためには、ます日本遺産とその構成文化財について、地域住民への周知徹底が必要だ。訪れた人にとっても、住民さえ知らない文化財になんの魅力も感じない。自分たちの町の誇るべき文化財を正しく理解し、住民目線でその活用を考えることで新たな魅力が生まれるはずだ。

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