奈良市高畑町のホテルが「ホテル尾花」として再出発した。芝居小屋や映画館として親しまれた「尾花劇場(尾花座)」の懐かしい名前を復活させたのだ。

　明治42年に芝居小屋として開館。大正9年には映画館となり、古都の娯楽の殿堂となった。昭和54年に閉館し、ホテルに改築された。

　昨年12月に封切られた周防正行監督の映画「カツベン!」は大正時代、関西の地方都市にある映画館を舞台にしている。奈良新聞に来社の際、監督は館のモデルは尾花劇場であると打ち明けてくれた。

　遺された尾花劇場の資料を参考に映画を製作したという。活動写真(映画)草創期の尾花劇場のにぎわいは、作品の中でノスタルジックに描写されていた。

　中学時代、休日に奈良市を訪れ、大きなスクリーンで映画を観賞するのが最大の楽しみだった。隣接市にはあるものの、県都に映画館がなくなってずいぶんたつ。

　ホテル尾花は、割安の料金で宿泊できる県民限定の「顔見世プラン」を10月31日まで用意している。尾花劇場で青春を過ごした人たちに利用してもらいたい。(栄)