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私事で恐縮だが、89歳の父が吐血し入院…

 私事で恐縮だが、89歳の父が吐血し入院した。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めたころだ。軽い胃潰瘍で命に別条はなかったが、2週間の入院生活で父は衰えた。

 自力歩行が困難になり、リハビリのため転院することに。嫌がる父を「家に帰る」と半ばだまし、介護タクシーに押し込んだ。

 転院先で入院手続きを終え、病室の父に会おうとすると、看護師は「新型コロナ感染防止で親族の方でも面会は禁止です」。その日は病院がある京都府に緊急事態宣言が出された日だった。

 それから宣言解除まで1カ月間あまり、父に一度も会えなかった。父は認知症の症状が出始めており、息子の顔を忘れてしまうのではと恐怖を感じた。

 全国各地の病院や介護施設でも面会禁止となり、同じような思いをした人が多いと聞く。感染の有無に関わらず、多くの人の生活に影響を与える感染症の恐ろしさをあらためて感じた。

 解除後、面会が再開され、見舞いに行くと父は息子の顔を覚えていた。そして一言、「まんじゅうが食べたい」。次は、とびきり上等なまんじゅうを買っていこう。(法)

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