金曜時評

奈良モデル対応を - 論説委員 松井 重宏

 感染拡大が続く新型コロナウイルスについて世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的流行)とみなせる」とする見解を明らかにした。必ずしも用語の問題ではないだろうが、危機感を共有するため、あえてインパクトのある言葉を使って対策強化を全世界に呼び掛けた。

 一方、県内では感染者が発生している現場から、県などに対して危機感の共有を求める声が挙がっている。先日、天理市が県に提出した要望書の中には、感染拡大の防止に向けて県と市町村との緊密な連携を求める一文があり、平時の縦割りによる業務体制では対応し切れない状況に、いら立ちもにじませた。

 政府は、国会で新型インフルエンザ対策特別措置法改正案の審議を進める一方、直ちに緊急事態宣言を出す状況にはないとする姿勢を崩していない。ただ各地で感染者の確認が相次ぐ中、県や市町村は、住民に冷静な対応を呼び掛けると同時に、感染拡大の防止に向けた取り組みで非常時対応に踏み込む必要もありそうだ。

 特に求められるのは感染するリスクと感染させるリスクに対するきめ細かな対処。保健所の業務は県や中核市が担うが、感染した人には何の罪もないことを本人や周囲、そして地域全体がよく理解した上で、プライバシー保護や心理的ケアを行うのは住民の暮らしに近い、市町村など基礎自治体の仕事になる。

 風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続いているなど、感染が疑われる基準に達していなくても、いったん感染するリスクにさらされた人は、新たに感染させるリスクを担わされる。そうした不安を抱えた個人、地域の相談に行政はどう応えるのか。医療、検査体制の拡充や経済対策、休校に伴う児童、生徒の居場所づくりなど求められる仕事は多いが、だからこそ県と市町村、各部局が連携して取り組む「奈良モデル」の実践が望まれる。

 県内8例目の感染者となった女性は、2月29日に発熱があって医療機関を受診したが、その後に熱が下がったため、3月4日には大阪市内の職場に電車で出勤するなどしており、相談センターに相談して検査、陽性が判明したのは11日になってからだった。県内ではまだ感染が流行している状況にはないとされるが、感染者が自覚するまでに時間がかかる状況があるなら、やはりパンデミック(原義は「全ての人々」)と捉え、危機感を共有したい。

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