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金曜時評

再検討する必要も - 編集委員 山下 栄二

 奈良市が導入を目指している宿泊税が論議を呼んでいる。市は同税により税収増、観光活性化を図ろうとしている。新型コロナウイルスの流行を受け、市は来年度中の導入は先送りにしたが、導入自体は見直さない考え。しかし、市内の宿泊事業者からは「税導入について納得のいく説明がない」との反対の声が圧倒的だ。市は「延期ではなく根本的に見直すべき」ではないだろうか。

 宿泊税はホテル・旅館などの宿泊に課税し、観光施策などに充てる法定外目的税。宿泊事業者が宿泊者から徴収して市に収める。近畿では既に大阪府、京都市が課税している。奈良市は、税を公共トイレの整備などの観光振興に充てる意向を示している。市は有識者らによる「検討懇話会」の意見を踏まえ、「導入の合理性が確認された」(仲川元庸市長)としている。

 これに対して市内のゲストハウスや民泊などの経営者が1月16日に「市小規模宿泊業協議会」(24施設)を設立して、「小規模事業者に対してまったく説明がない」「宿泊料金が安い施設ほど税負担は大きい」などと反対を表明。さらに市旅館・ホテル組合(56施設)も2月4日、税の導入をやめるよう市長や市議会議長らに要望書を提出した。宿泊客は観光客全体の1割にすぎず課税は不公平▽市から納得のいく調査・説明がなく、施策も示されていない▽他府県との競争激化の中で経営が圧迫される▽邦人旅行者の減少傾向が顕著で導入時期ではない▽外国人などへの説明に時間がかかり、支払い拒否など負担が出る―などが反対の理由だ。

 京都市が導入している宿泊税だが、同じ観光地といっても京都市と奈良市の事情が違うとの意見がある。全観光客のうち宿泊する人は京都市が約3割に対して奈良市は約1割にすぎない。夜の観光資源に富む京都市に比べ、奈良市は寺社目当ての日帰り観光客が圧倒的に多いのだ。残念ながら、一部を除いて奈良は商店の閉店時間が早く、宿泊して飲食する魅力に乏しいと言わざるをえない。

 といっても、奈良市内に初の外資系高級ホテルのオープンが予定されているなど、今後の「宿泊観光の発展」が大いに期待できる状況だ。そんな中で、競争力の高い宿泊施設を有する大阪や京都と同じように宿泊税を導入するのはいかがなものか。まず、魅力ある宿泊地づくりを優先すべきではないか。奈良市には税導入について再検討を望みたい。

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