金曜時評

物心両面で支援を - 編集委員 高瀬 法義

 今年も間もなく1月26日を迎える。わが国の文化財保護を考える上で決して忘れてはならない日だ。今から71年前、昭和24年のこの日に現存する最古の木造建築物の法隆寺金堂(斑鳩町)が炎上。古代の仏教絵画の傑作とされる堂内の壁画(7世紀)が焼損し、極彩色だった彩色が失われた。この悲劇をきっかけに翌25年に文化財保護法が制定。同30年には同日が「文化財防火デー」に定められた。

 しかし、火災により貴重な文化財建造物が傷つくケースは絶えない。昨年10月末には沖縄の世界遺産・首里城跡に復元された正殿などが焼失。海外でもフランス・パリのノートルダム寺院が炎の中で崩れ落ちた。

 わが国の文化財建造物は燃えやすい木造が大半を占める。一昨年、300年ぶりに再建された興福寺中金堂も戦火などで計7回も焼失しており、文化財保護は火災との戦いといえるだろう。首里城火災後、世界遺産登録地にある建造物を対象に文化庁が実施した防火施設の緊急調査でも、史跡などの建造物93%、復元建造物91%で木材をはじめ可燃物を使用していた。

 一方で、同じ調査では自動火災報知設備の設置率は史跡などの建造物65%、復元建造物55%にとどまり、設置後30年以上経過し老朽化したものもあった。また、消火用具・設備の未設置も史跡、復元建造物ともに3割前後あり、厳しい状況にあると言わざるを得ない。

 こうした状況を受け、文化庁は文化財建造物の防火対策強化に向けた「5カ年計画」を策定。スプリンクラーや消火栓の設置、古い消火設備の交換などを進めるほか、文化財所有者らによる防災計画策定や定期訓練実施などを盛り込んだ。

 ただ、初期消火に有効とされるスプリンクラーも誤作動で文化財を傷めるリスクがあるなど、保護と防火体制の充実を両立させるのは難しい。さらに行政の支援はあるものの文化財所有者らの負担は大きく、人口減少が進む中、今後、文化財保護の担い手不足の深刻化が予想される。貴重な文化財を次世代に残すためには、所有者や地域への物心両面での支援充実が必要だ。

 本県は国宝指定の建造物数で日本一を誇る。荒井正吾知事は昨年、文化財の防災対策強化に向け、県独自の条例を制定する考えを示した。文化財保護には県民の理解が不可欠であり、県が持つ文化財の価値や魅力を知ってもらう施策の充実が望まれる。

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