注目記事読者に奈良の地酒プレゼント

国原譜

「伝説化した未解決事件の謎を解く歴史学…

 「伝説化した未解決事件の謎を解く歴史学の名著」。帯の宣伝文句につられて文庫本を購入した。「ハーメルンの笛吹き男」(阿部謹也著、ちくま文庫)である。

 奇妙な男の笛に誘導されて、約130人の子どもたちがどこかに連れ去られてしまう。フィクションの物語だと認識していたが、13世紀ドイツで起こった実話に基づくのだそうだ。

 著者はこの伝説についてのさまざまな文献や研究を駆使して、名探偵のように真実に迫っていく。浮かび上がってきたのは中世欧州の庶民の生活、貧しさ、差別だ。

 魔女狩りで代表される欧州の中世は暗黒時代。こんな表面的な知識しか持っていない筆者に、実際に西欧中世に生きているかのような知的興奮を与えてくれた。

 古代ばかりクローズアップされる奈良だが、中世、近世になっても精いっぱい、人々は生きてきた。田舎町ハーメルンに、世界的な伝説が継承されてきたように。

 本紙文化面に平成28年6月から昨年12月まで連載された「奈良の昔話」。カミナリやオオカミを怖れる素朴な人々の話の裏側には、生きた歴史が隠されている。(栄) 

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド