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金曜時評

自転車保険加入義務化 - 編集委員 松岡 智

 平成期、心身の健康などを目的に何度目かの自転車の流行が起きた。近年は地球環境に優しい乗り物としても存在感を増し、ブームを超えた広がりを見せる。今後の自転車利用の定着、拡大には快適性、安全・安心面の促進が不可欠だが、サイクル道や輪行をサポートする周辺環境の整備など、快適さでは県内でも計画段階のものも含め充実の方向がうかがえる。

 一方、自転車の利用時間増、活用目的の多様化とともに安全・安心面では課題が噴出。携帯端末などを操作しての「ながら運転」、歩道上での高速走行といったルール、マナー違反も目に付き始めた。国などの調べでは、自転車が関係する国内の事故は近年増加傾向。県内では昨年までの3年間、700件ほどで推移している。自転車が加害者の場合の責任も重くなる状況で、人身事故では1億円近い高額賠償事例も起こっている。

 このため自治体などでは、事故での被害者救済と加害者の経済的負担軽減などを目的に自転車保険の加入義務化が進められている。国土交通省によれば、関連条例などの公布、施行は今年10月15日現在、自転車保険加入を「義務」とするのが11都道府県7政令市、「努力義務」が13都道府県3政令市となっている。県でも加入義務化を含む自転車関連の条例を今年10月に公布。義務化は来年4月1日から施行される。いずれの自治体も罰則規定はない。だが国などの調べでは、義務化している自治体の方が保険加入率は高く、条例などを設ける意義は小さくない。

 モノを使用する際、安全と安心は欠かせない要素。加害者となる可能性もある自転車に関しては、万が一を補ってくれる保険は心強い。本人、配偶者とともに同居親族全員が対象で、賠償事故での億単位の補償が付いた保険が月額数百円からある。年齢にかかわらず賠償が求められる自転車関連事故に対する社会意識の変化や、注意をしていても事故が起こりうることを考えれば、義務や罰則の有無にかかわらず保険の加入は前向きに考えておくべきだろう。

 もちろん自転車に乗る際のルール、マナーの順守は当然のこと。同時に県内でもまだ十分とは言い難い、自転車利用者が被害者にも加害者にもなりにくい道路環境の整備も一層の推進が望まれる。

 自転車は多方面で利便性が高く、利用者にさまざまな恩恵を与えてくれ、環境への配慮もある。誰にとっても好もしい存在として末永く付き合うために、まずは自らできる一歩から始めたい。

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