金曜時評

なぜ膨張したのか - 論説委員 増山 和樹

 「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」ということだろう。首相主催で開かれてきた「桜を見る会」について、政府は来年の中止を発表した。招待客は政府が目安とする1万人に対し、今年は約1万8千人が出席、費用もうなぎ登りで、約5500万円が支出されている。

 安倍晋三首相の地元関係者が多数含まれていると野党が攻勢を強めた矢先の中止表明で、批判をかわす狙いがあるのは明らかだ。長期政権のおごりと捉えられてもやむを得まい。安倍首相は招待客の人選に自身の関与を否定している。事務所レベルであっても、公金で行う行事の招待客をお手盛りで増やしていたとすれば、まさに「私物化」である。

 「桜を見る会」の歴史は昭和27年にさかのぼる。前年の講和条約でようやく主権を回復したばかりの日本で、各界で功績のあった人や功労者を慰労しようと始まったものだった。70年近い歴史はもはや伝統行事だが、きちんとした基準や総括のないまま、慣例で運営されてきたことが招待客の増大につながった。

 開催規模が膨らんだのは第二次安倍政権以降とされ、どのような経緯があったのか、政府はできる限り明らかにする必要がある。首相をはじめ政治家の選挙対策の一面が強いとすれば、国民が納得できるものではないだろう。地元・山口県の後援会関係者に首相の事務所名を記載して届いた案内文も明らかになっている。

 増え続ける招待客やそれに伴う経費の増加は、関係者の間では当然認識されていたはずだ。菅義偉官房長官は記者会見で、招待基準の明確化やプロセスの透明性確保に加え、招待人数や予算を全般的に見直す考えを示した。これまでの運営が不適切と認めた形だが、問題化するまでなぜ改善できなかったのか。政権のおごりや緩みはなかっただろうか。

 安倍首相は10月に開かれた共同通信加盟社の会議で講演し、ミスター・ラグビーこと故平尾誠二氏の言葉を引き合いに「現状維持は決して許されない。ましてや内向きな政局や離合集散に費やす時間などない」と力を込めた。「桜を見る会」の問題は内向きな政局に当たるのだろうが、運営の見直しにも国会答弁にも、十分な時間を費やしてほしい。

 現在の安倍内閣では、経済産業相と法務相が「政治とカネ」の問題で辞任している。その矢先に「桜を見る会」の問題が浮上した。国民の不信感は強まっている。現状維持は決して許されない。

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