金曜時評

奈良の心を世界へ - 編集委員 高瀬 法義

 イギリス・ロンドンの大英博物館で、県内の寺院に伝わった国宝の仏像など約20点を展示する「奈良―日本の信仰と美のはじまり」展が始まった。来年の東京五輪・パラリンピックに向けて、世界への奈良の魅力発信を目指した県の事業。今年1~3月にフランス・パリのギメ東洋美術館で開かれ、約3万2000人の来場者を集めた興福寺の仏像3体の展示に続く企画だ。県内社寺の名宝を一堂に集めて国外で展示するのは初めてという。初公開となる「法隆寺金堂壁画」(飛鳥時代)の明治時代の複写をはじめ、大英博物館の日本コレクションの一部も併せて展示されている。

 仏像が「美術品」として美術館や博物館で展示されるようになる近代以前にも、遠くの人々との結縁(けちえん)や寄付を募る勧進などを目的に秘仏を寺外で公開する「出開帳」が頻繁に行われた。今回は県内への観光客誘致を目指し、各寺社の協力で実現した海外での出開帳ともいえる。

 白鳳美術の傑作、法隆寺の「夢違観音」(国宝)の美しさは海外の人たちの心も捉えるだろう。しかし、寺院にとって仏像は本来、信仰の対象であり、その深い精神性も伝えなければ意味がない。そのため、会場で東大寺や薬師寺などの僧侶たちによる法要が営まれたほか、節の付いたお経「声明(しょうみょう)」の公演や仏教に関する講演会なども行われた。

 また、舞楽面をはじめとする宝物を出品した春日大社もみこの舞などを披露。花山院弘匡宮司が日本古来の神道や、日本文化の寛容性・多様性の象徴といえる神仏習合について解説した。花山院宮司によると、現地の人々の関心は高く、解説の英訳文を多くの人から求められたという。奈良の心の一端は確実に伝わったようだ。

 今年4月、文化財の活用を重視した改正文化財保護法が施行された。今後、訪日外国人観光客誘致に向けて文化財が果たすべき役割は増すだろう。しかし、美術品として仏像や文化財を見せるだけでは、本当の奈良の魅力は伝わらない。今回の大英博物館と同様、歴史や精神性などを分かりやすく説明し、理解してもらえるようなソフトづくりが必要だ。

 現在、奈良公園周辺の交通渋滞が問題となっているが、東大寺をはじめ一部の観光地への人気集中もその一因に挙げられる。他地域への観光客誘致が県観光の課題であり、そのためにも奈良の寺社や遺跡などの魅力を正しく発信することが大切だ。

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