金曜時評

若い人材を大切に - 編集委員 松岡 智

 来春高校を卒業する生徒の就職活動が重要な時期を迎えている。県内企業の多くが人手不足を実感する時代に、高卒の人材も将来にわたる貴重な戦力だ。

 県や県教育委員会、奈良労働局によれば、県内企業での高卒就業者の3年以内の離職率は近年、約42~47%で推移。全国平均よりやや高く、県内公立高からの人材は1年目での離職が多いという。数字からは進路決定の難しさ、県内企業が高卒人材定着に苦慮する状況がうかがえる。離職理由はさまざまだろうが、現状改善には採用の前と後の再検討も必要だ。

 県での高校生の就活はほとんどの都道府県が慣例とする、各人が一社を選んで応募する「1人1社制」。見直し論もあるが、生徒の学業への負担の面などから現状肯定派が多数を占める。全国的には、選択肢を広げてミスマッチを減らそうと、複数の企業の説明会を行う公立校も出てきた。県教委は独自の離職状況調査や、調査を踏まえた関係者による対策会議を始めている。また公立高の進路指導担当者対象に県内企業を知ってもらうバス見学会、インターンシップの拡充にも着手している。

 現況で就活を充実させるなら、指導者のみならず生徒の企業理解の一層の促進は不可欠。企業選択の最終段階で助言することが少なくない保護者にも、県内企業をよく知る機会を設けるべきだろう。

 もちろん企業側にも、自社認知への積極性は求められる。ただそれ以上に重視されるのは、採用後に人材をどう育て、離職を防ぐ環境を構築するかだ。従業員の労働意欲の維持、向上には多方面でのステップアップの支援は欠かせない。実際県内でも、現代の若者が受け入れ、参加しやすい指導、研修のために内容はもとより講師、時間などにも工夫し、人材定着を実現している中小企業がある。

 業種によっては、企業内での技能向上が従業員が次の段階を目指す離職を招くのではとの懸念もあろう。だが一方で、人を育てられる企業風土が他の従業員を含む周囲に好影響をもたらし、県外求職者にも注目される効果を生む可能性も否定できない。日頃からの企業姿勢が問われる部分でもある。

 高卒就職者への関係者の取り組みは単に離職率を下げることではなく、貴重な人材を生かし活躍する場を増やすためだ。それが県内企業の潜在力を底上げし、県の活力にもつながる。そのためにも関係するすべての人々には、将来を見据える冷静な目となお実効性の高い方策、行動が望まれている。

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