「今度の台風、被害が心配やなあ」と不安がる母に、「ここらへんは大丈夫。法隆寺の五重塔みてみい。1300年立ってるで」と言って安心させている。

　日本初の世界遺産、法隆寺周辺の知名度は国内外で抜群だ。実は隣町の住民なのだが、「法隆寺の近くに住んでいる」と話すと、ほとんどの人が理解してくれるので重宝する。

　そのような「世界の至宝」があるにもかかわらず、観光資源として生かせていない。駅から殺風景な道沿いを黙々と歩いている観光客を見て、申し訳なくなってくる。

　「乱開発されてない」との意見もあるだろうが、それ以前の問題。厳しくいえば、おもてなしの心の欠如。観光客数も減少傾向という。

　日帰り客がほとんどで、宿泊施設が3軒しかなかった同町だが、参道沿いに「門前宿　和空法隆寺」が8日にオープンする。外国人客やシニア層に「ゆったりと和文化体験を」。

　期待できるコンセプトだが、点として孤立してしまわないかが気掛かり。魅力的な飲食店の誘致や観光インフラの整備で、面として魅力度アップを図らねばならないだろう。(栄)