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国原譜

大型書店をのぞいていたら、奈良市出身の…

 大型書店をのぞいていたら、奈良市出身のプロボクサー村田諒太さんの愛読書と宣伝されていた。「夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録」(V.E.フランクル著)である。

 元世界王者は何が好みなのかと、30年ほど前に買ったのに放置してあった旧訳版を読んだ。数百万人ものユダヤ人らがナチスドイツによって虐殺された強制収容所の生き地獄がすさまじい。

 著者はユダヤ系医学者。家畜扱いのような強制労働を綴る。自身または他の収容者、看守らの心理分析は秀逸。こんな中でも人間らしさを失わない人はいる。醜悪の中にある一縷(る)の清涼さが心にしみる。

 昨年、当時の日本ボクシング連盟会長の不祥事が明らかになった際、村田さんが「夜と霧」の部分を引用したのを思い出した。現在日本社会においても示唆に富む書だ。

 王者から陥落した後、再起を期している村田さんは、この本から多くを得ているのではないか。「ひきこもり」気味な人に、ぜひ一読してほしい。

 どんな状況におかれても「苦悩にふさわしく生きなければならない」。それが人間の尊厳である。(栄)

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