金曜時評

米中の争いで影響 - 編集委員 辻 恵介

 今秋10月に予定されている「消費税率の10%への引き上げ」。安倍政権の安定した政権運営のためか、実施を前提にこれまで準備が進んできたが、ここへきて慎重論が広がってきている。政府は「2008(平成20)年のリーマン・ショック級の出来事がない限り実施」としてきたが、米中の貿易戦争激化の影響が、日本をはじめ世界中に広がり始めてきたからだ。

 米中による「自国ファースト思想」に基づく世界の覇権争いが、世界各国を巻き込んでいる。例えば、米トランプ政権が打ち出した中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品への禁輸措置を受け、KDDI(au)やソフトバンクなどが、5月下旬からの新型スマートフォンの販売を延期、予約停止を先ごろ発表した。日本の企業、消費者にとって、他の分野でもさまざまな影響が出てくるのは必至だろう。

 また、安倍首相の経済政策のブレーンが相次いで、「引き上げは凍結すべき」と発言していることも注目を浴びている。内閣官房参与を務めた本田悦朗・前スイス大使や藤井聡・京都大学大学院教授が、「アベノミクスを失敗させないためにも凍結を」などと話しているのだ。

 24日に発表された5月の月例経済報告では、政府は国内景気の全体像を示す総括判断を引き下げた。3月に続く2カ月ぶりの下方修正で、中国経済減速の余波などで、「輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」とした。「回復」という言葉をぜひとも残しておきたい政府の思いとは裏腹に、庶民の実感とは相当かけ離れているように感じる。

 軽減税率の取り組みも、コンビニ店での店内飲食と持ち帰りでの金額の差など、非常にややこしくて分かりにくい。各方面での混乱は必至で、「そんなややこしいんやったら最初からやめといたらよろしい」といった声もよく聞く。

 一方、令和初の国賓として来日した米トランプ大統領からは、今後も自動車や農産物などの貿易摩擦に対する要求や圧力が強まることが予想されよう。大相撲千秋楽での過剰にも見える安倍首相の「おもてなし」も、今後の最大目標が次の大統領選挙での「再選ファースト」であるトランプ氏に、その思いが届いたかどうか。

 中小企業や観光産業が多い奈良県にとって、中国経済の減速は、ストレートに影響が出てきそうで不安が募る。大阪での「G20サミット」(6月28、29日)の成り行きが大いに注目される。

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