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国原譜

八重桜の木を掘り起こそうとする男たちと…

 八重桜の木を掘り起こそうとする男たちと阻もうとする法師たち。その争いを描いた絵だが、どこか和やかさを感じさせる。現在、大和文華館で展示中の富岡鉄斎の「奈良八重桜図」だ。

 興福寺東円堂前にあった八重桜は、古くから和歌に読まれるなど名木として知られていた。そのため、平安の世に中宮(天皇の妻)が京都に運ばせようとしたが、奈良の法師たちに阻まれた。

 中宮は法師たちの風雅の心に感心し、八重桜の移植を諦めたという。鎌倉時代の説話集「沙石集」に残る説話で、鉄斎はその様子を描いた。

 東円堂は平安時代に後白河天皇の母、藤原璋子の発願で建立。現存する北円堂や南円堂と並ぶ重要な建物だったが、室町時代に焼失した。

 八重桜はその後も残り、観光名所になった。江戸時代の観光マップ「大和名所図会」にも東円堂の基壇とともに描かれている。

 東円堂推定地は県庁の東隣で、「奈良の八重桜」の石碑があり苗木が植わる。ただ、周辺には来月オープン予定の「奈良公園バスターミナル」の近代的な建物が建ち、往時の風情は感じられない。(法)

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