金曜時評

対応の具体化急げ - 論説委員 増山 和樹

 県東部最大の宿泊施設として約40年の歴史を持つ宇陀市の保養センター「美榛苑」が、4月から一時休館する。市の指定を受けて施設を管理・運営する「指定管理者」の公募に手を挙げる業者がなかったためだ。休館は県東部地域の観光振興にも影響する。市は半年後の営業再開を目指しているが、公募条件の見直しなど、対応の早期具体化が求められる。

 美榛苑は昭和55年にオープンした温泉付きの宿泊施設で、43室に190人を収容できる。大小の宴会場やレストランもあり、宿泊のほか、各種宴会での利用も多い。宇陀市(合併前は榛原町)の直営施設だったが、宿泊客の減少などで経営状況が悪化、一時借入金は14億5千万円に膨らみ、平成22年に指定管理者制度を導入した。指定管理者は市に年間2千万円を収め、管理・運営を担う。

 これまで休暇村協会の関連会社が指定管理者だったが、指定期間の終了に伴う公募に応募しなかった。背景に休暇村協会が市と協定を締結して進めていた同市榛原萩原への宿泊施設誘致事業の中止があるのは明らかだろう。昨年4月に初当選した高見省次市長が中止を表明し、是非を問う住民投票でも僅差ながら事業への反対が「賛成」を上回った。新しい宿泊施設は老朽化が進む美榛苑の代替施設とするはずだった。

 その後、美榛苑の指定管理者公募は2度にわたって応募者ゼロとなり、一時休館に至った。忘れてならないのは住民投票が美榛苑の存続を前提としていたことだ。「美榛苑があるなら新しい施設はいらない」と考えて反対票を投じた住民もいるだろう。高見市長は記者会見で、応募がないことを「想定まではしていなかった」としたが、どのような見通しを持っていたのか。これまでの経緯から休暇村協会が手を引くことは予想できたはずで、その見通しの上にどのような手を打ってきたかが問われる。

 一時的にせよ、施設の休館や閉鎖は利用者と雇用を失うことを意味する。平成20年に3万5千人を超えていた宇陀市の人口は、10年間で5千人近く減った。年齢別人口は65~69歳が最も多く高齢化が進んでいる。雇用の創出は行政に突きつけられた重い課題だ。

 高見市長は美榛苑を観光戦略の中核施設と位置づけている。休館が長引くような事態になれば、利用者離れも進むだろう。市議会との関係構築も含めた市長の手腕が問われている。

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