金曜時評

運営見直し存続を - 論説委員 増山 和樹

 昭和61年に発足し、演奏を通じて防火啓発を行ってきた奈良市消防音楽隊に、市議会で廃止や休止を求める声が出ている。市消防局の正規職員数が条例定数を大きく下回る中、音楽隊のメンバーには消防や救急の隊員も含まれる。休止などの手だてにより、現場の人員確保を求めたものだ。

 消防力の低下は市民の命と暮らしに直結する。事が起きてからでは取り返しがつかない。現場の人員確保は当然だが、音楽隊の存廃に直結させるのは性急の感がある。職員数は消防局全体の問題であり、音楽隊の廃止・休止で解決するものではない。仮に好転が見込めるとしても、一時しのぎになる。

 消防局幹部は人員不足を認めていないようだが、現場では対応を求める声が出ている。7、8月の救急出動中、18件に救急救命士が搭乗していなかった。音楽隊見直し論の背景にも、ただでさえ少ない職員を不急の演奏活動に割かれては、業務に支障が出るとの事情がある。

 音楽隊の隊員は現在25人で、小学校や市の行事、年始の消防出初め式などで演奏している。演奏を通じて防火を呼び掛け、市民との交流という面でも活動の意義は見いだせる。音楽隊の演奏で初めて生演奏に触れる小学生も多いだろう。活動には情操教育の側面もあるのではないか。

 懸念されるのは、これらの活動が公務であるにもかかわらず、快く思わない声があることだ。音楽隊は合奏訓練も月4回ほど行っているが、他の職員には活動が趣味の延長として映ることもあるのではないか。現場に不満がくすぶっているなら、チームワークに影響が出ないか心配である。

 職員数の問題と音楽隊の存廃は、一度分けて考えることが必要だ。音楽隊を巡る今回の議論には、消防局に音楽隊が必要かという根本的なテーマが隠れているように思われる。そこに職員数の問題かぶせると、専属の音楽隊を持たない限り、不要のレッテルを貼ることになりかねない。

 消防局内には、音楽隊の活動について「年次計画が一方的に各消防署に押しつけられるから対応が大変」「日勤日に練習するため本来の業務に影響が出ている」などの声がある。これらの声に目をつぶったままでは何も変わらない。音楽隊員の多くを専任の嘱託職員で運営する京都市消防局など、他府県の事例も参考になる。県内で唯一の消防音楽隊を職員が誇りに思えるよう、運営の在り方を考えてほしい。

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