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金曜時評

寄付使い道重視へ - 編集委員 高瀬法義

 ふるさと納税の返礼品を巡り、政府は法改正を伴う規制を検討している。これまでは自治体の自主性を尊重してきたが、寄付を集めるために高額な返礼品を用意する市町村が増えるなど競争が激化したためだ。

 ふるさと納税は平成20年、大都市の税収を財源の乏しい地方に移し、地域を活性化させる目的で創設。都道府県や市区町村に寄付すると、寄付額の2000円を超える分が地方税の住民税、国税の所得税から軽減される仕組みだ。

 同様の目的を持つ地方交付税制度と違う点は、納税者自身が納税(寄付)する自治体や使用目的を選べることだ。生まれ育った自治体への恩返しで納めたり、特定の事業を直接応援できる。さらに自治体によっては返礼品もあり、納税者にとっては魅力的な制度といえる。

 財政難に悩む自治体にとっても魅力的であり、少しでも多くの寄付を得ようと返礼品を競い始めた。その結果、ふるさと納税のポータルサイトは「お得な買い物情報」のような状態となっている。「肉、カニ、米」が返礼品の「三種の神器」らしい。

 政府は「過当競争」を沈静化するため、返礼品は地場産品に限り、調達費を寄付額の30%以下にするように規制。違反した自治体は制度から除外し、寄付しても税の優遇措置を受けられなくなる仕組みを導入する。県内も5市町村で同基準に抵触する返礼品があると指摘を受けている。

 しかし、規制による「税収減」が危惧される一部の自治体からは「『30%以下』の基準の理由が不明確」や「特産品の定義があいまい」などの不満が噴出。さらに、人気のある特産品の有無で自治体間に不公平が生じる恐れもあり、政府が考える規制方法にも疑問が残る。

 ふるさと納税は寄付制度だ。本来、寄付とは見返りを求めないものであり、税控除の上に返礼品を設けるのは趣旨に反する。さらに少子高齢化や人口減で税収が減少する中、少ないパイを自治体同士で奪い合うのも不毛だ。

 魅力ある返礼品が無ければ十分な寄付は集まらないのが現状。一方で、北海道の地震や西日本豪雨などの災害支援にも多額の寄付が集まっているという。本当に資金を必要としている地域を応援し、自治体が独創的な事業を競い合うことこそが、本来の趣旨である地域活性化につながる。返礼品重視から寄付の使い道重視へ変える仕組みづくりが必要だ。

 

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