特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

意識の引き締めを - 論説委員 松井 重宏

 交通死亡事故の急増を受けて、県交通対策協議会の会長を務める荒井正吾知事が今月6日に交通死亡事故多発警報を発令して1週間。県警のまとめによると、県内では8月31日未明に10代の若者8人が死傷する重大事故が発生して以降、今月5日までの6日間で計10人が亡くなる極めて厳しい状況となり、警報が発令された6日も1人が死亡。7日から12日までは死亡事故こそなかったものの、重傷事故などがなお続発しているとして県警は交通指導、取り締まりの強化に努めている。

 警報が発令されるのは「10日以内に5件以上」の死亡事故があった場合で、原則として14日間を期間に、県交通対策協議会や県、県警などが連携して事故防止に取り組む。これまで平成26年7月29日と28年7月5日に発令されており、今回が3度目。

 これを見ると県内では2年に1度のサイクルで重大事故が多発する異常事態を繰り返している格好だが、何か特別な理由があるわけではないのだろう。また、それぞれの事故も原因は異なっており短期間に集中したのは“偶然”とも言える。ただ2年ごとの頻度が、社会的な安全意識に緩みが生じる期間を反映した結果だとすれば、再発防止のためには、改めて息の長い対策が求められることになる。

 交通事故による全国の死者数は昭和45年に最多の1万6765人に達し、交通戦争とも称された。その後は、昭和60年代から平成に掛けて第2次交通戦争と呼ばれた時期をはさみながらも、徐々に改善。平成8年に再び1万人を切った後、21年には5000人以下と半減。ここ2年間は3000人台で推移しており、県内も28年47人、29年40人と減少が続いている。今年の数字は12日現在で31人、前年同期比プラス3人。

 防災や防犯も含めて暮らしの安全、安心を守るには県民自身の意識に負うところが大きい。特に交通事故は起こすのも、防ぐのも当事者次第という面もある。県警が7日に開いた緊急の交通課長等会議では、桑原正樹交通部長が死亡事故急増を異常事態とした上で「県民一人一人に命を守る行動を取るように、知恵を絞っていただきたい」と、各署に啓発の強化を指示した。

 予定通りなら、来週半ばには警報が解除されるが、入れ替わりで21日から秋の交通安全県民運動がスタートする。悲痛な事故を繰り返さないため、決しておざなりでもマンネリでもない真剣な取り組みで「安全なら安心」の輪を広げたい。

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