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金曜時評

防災対策急ぐべし - 論説委員 北岡 和之

 県内にも被害をもたらした台風21号の影響で、関西国際空港が孤島になった。高潮や暴風で滑走路に浸水、海上空港の防災の難しさを浮き彫りにした。今回の甚大な被害を目の当たりにしたら、誰でも思い浮かべるのは「南海トラフ巨大地震ではどれほどの被害になるのか」という不安だ。

 関西国際空港は平成6年9月4日に開港した。世界初の人工島による海上空港であり、旅客・航空貨物の両方で日本初となる24時間運用を行った。

 開港前の平成元年から4年間ほど大阪担当記者だったが、当時の関西国際空港会社から記者証を交付され、取材したことが思い出される。「平成維新」の命名で知られ、当時の外資系コンサルタント会社マッキンゼーにいた大前研一さんの空港に関する記者会見にも出席した。24時間空港となれば奈良へも昼夜を問わず海外からの観光客らが訪れる。それは奈良らしさを守るためには良くないのではないかという趣旨のコラムを本紙に書いたこともある。

 開港前から人工島の地盤沈下のことや高潮・津波の被害への懸念は話題になっていた。地盤沈下も技術的に克服していけると説明を受けても、完全には納得できない思いがもやもやとあった。開港から20年以上もたって、いつしかそんな不安も忘れていたというのが正直なところだが、今回の被害でかつての思いがよみがえった。

 西日本豪雨、大阪北部地震、台風21号など立て続けの災害からの復旧・復興もまだ道半ばという状況のところへ、突如6日未明には北海道で大地震。「安全・安心」や「防災」に向けた備え・取り組みの強化への願いは募るばかりだ。のんびりしていられないとの焦りはより強くなった。県は独自に「県防災の日」を設定。地震、水害、土砂災害のそれぞれに日を設けて啓発しているが、具体策も急がれる。

 南海トラフ巨大地震では、県内でも約1700人の犠牲者と約1万8000人の負傷者、約4万7000棟の住家全壊などの被害を想定する。近隣府県の沿岸や関西国際空港を含む大阪湾ベイエリア地帯の津波による被害にも備え、自衛隊と連携した県広域防災拠点(五條市内を予定)の整備に対し、国ももっと支援すべきではないか。

 台風21号は「第3室戸台風」で「第4室戸」も絵空事ではないとの指摘も。県は関西国際空港へのアクセス強化にと新鉄道を構想するが、そもそも海上空港のままでいいのかとさえ問われているのではないか。

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