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金曜時評

命守る取り組みを - 編集委員 高瀬 法義

 文部科学省は今年4月、学校教室内の望ましい温度基準の上限を従来の30度から28度に約50年ぶりに改定した。年々夏の気温が高くなっていることを受けた措置だが、基準達成には教室のエアコン設置が不可欠だ。気象庁が「災害級」とする今夏の猛暑の中、その設置率に注目が集まっている。

 文科省の調査によると、平成29年4月現在、県内の小中学校普通教室のエアコン設置率はわずか7・4%と全国順位で下位低迷。近畿の他府県と比べても、京都府84%▽滋賀県82・8%▽大阪府77・3%▽兵庫県58・8%▽和歌山県44・5%―で最下位に甘んじている。保健室や図書館などの特別教室を含めても18・4%と、2割にも満たないの現状だ。

 普通教室の設置率は東京都の99・9%がトップ。次いで香川県97・7%が続き、両都県の子どもたちは、ほぼ確実にクーラーの効いた教室で授業を受けられる。設置率上位の自治体と本県との教室環境に関する格差は、見過ごすことはできない。

 なぜ、エアコン設置は進まないのか。最も大きな理由は財政面だ。公立学校の場合、公平性の観点から多くの学校に一斉に設置することが望まれ、膨大な財源が必要となる。また、設置後のランニングコストも大きな負担となる。もう一つ理由として考えられるのは、大人の意識の問題。今もって「子どもに我慢を覚えさせることも必要」との「精神論」も根強く残る。エアコン設置の必要性を認めながらも、校舎耐震化などに予算が優先されてきたのではないか。

 しかし、奈良市の平均気温は50年前と比べ約1度近くも上昇。最高気温が35度を超える「猛暑日」も増えており、確実に気候が変動している。

 今月20日に日本救急医学会が「熱中症予防に関する緊急提言」で記したように、身長が低い子どもたちは地面からの放射熱の影響を受けやすく、近年の暑さは校舎の耐震性と同様、子どもたちの命に関わる問題といえる。子どもたちが熱中症で倒れるのは、虚弱になったわけでも、精神的に弱いわけでもない。

 荒井正吾知事は先日の記者会見でエアコンの設置を進めるため市町村への財政支援を検討を示唆。県立高校についても、改築を予定している2校を除き、再来年度までに設置を完了する計画の前倒しも検討するという。県内の市町村でも、さまざまな動きがでてきた。子どもたちの命を守る取り組みを急がないといけない。

 

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