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金曜時評

迫る危機に先手を - 編集委員 松岡 智

 県内企業の大多数を占める中小企業、小規模事業者は、各種調査の結果が示すように気の抜けない状況が続く。人手不足や後継者不在もあり、存続すら不透明だ。

 そんな中、広陵町は県内市町村で初の中小企業振興基本条例の9月制定に向け、大詰めを迎えている。

 同条例は、行政と事業者、経済団体、大学、金融機関、市民などが一体となり地元経済や地域を活性化させる取り組みの基本となる存在。各地の商工会や中小企業家同友会といった経済団体が行政トップらに呼び掛けるなどして、全国218市17区49町6村で制定されている(今年5月現在)。

 同町では靴下などの製造業が盛んだが、安価な外国製品にも押され経営環境は厳しさを増す。またベッドタウンとしての住民の高齢化に加え、人口減も予想され、将来的に税収面などで町の体力低下は否めない。条例制定は未来に先手を打った格好だ。

 先進地を見ると、産官学金関係者、住民らによる組織が定期的に会合を持ち、地域の特性に合った活性化策を策定。企業が真に求める助成策を設ける一方、企業側も学校現場などで自社や業界の認知度向上に積極姿勢。若い世代が地元企業、産業に親しみを持ち、将来の雇用につながるような行動を展開している。

 さらには企業を元気にするだけにとどまらず、新たな産業、ブランド品などを生み出し、従来からの地域特性を生かし、磨きをかけて地域振興に成功している例もある。同条例を踏まえた活動が地方創成の一つとも捉えられるゆえんだ。

 県内の同条例への反応は鈍く、全国的には後進地だ。もちろん同条例がどの地域にも適合するものでなく、条例を設けずとも同様の事業展開をしている地域もあろう。ただ、同条例を応用して農業分野で成果を上げる先進地もある。また今後に予想される地域の危機に具体的な方策を持たず、同町と同じような状況にある自治体は、同条例を精査し、先進地の例を確かめながら検討してみる価値はあるのではないか。

 もっとも条例制定はスタートラインにつくだけのこと。むしろ、その後の方がより重要だ。同町にしてもしかり。より効果的な地域振興の具体策を探る関係者による会議の運営と針路の決定、町内企業、住民への条例浸透と理解の促進など、多方面の人々が同じ方向で尽力するには越えるべきハードルは多い。それだけに同町の取り組みへの成否は注目され、期待も高まるのだ。

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