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国原譜

官僚の話に始まり、「官僚の悪」の地軸は…

 官僚の話に始まり、「官僚の悪」の地軸は何か、「官僚的」という気風の風洞は何か、と問い掛けて「家庭の幸福は諸悪の本」で終わる。

 一風変わったこの小説は「家庭の幸福」。没後70年の作家、太宰治が亡くなる年(昭和23年)ごろに書いた作品らしい。現代の官僚も家庭のエゴイズムに悩むのだろうか。

 「政府だの、国家だの、さも一大事らしくもったい振って言っていますが、私たちを自殺にみちびくような政府や国家は、さっさと消えたほうがいいんです」。

 作家である「私」は前半でこう叫ぶ。だが途中から別の短編小説の話に移り、津島修治(太宰治の本名)が町役場の戸籍係として登場。話の展開の結論が「家庭の幸福は諸悪の本」だ。

 太宰には「桜桃」という作品もある。当人とおぼしき父は子どもたちにサクランボを食べさせず、一人で食べては種を吐く。そして「子供より親が大事」とうそぶく。

 「斜陽」や「人間失格」なども含め、太宰晩年の作品は現代の息苦しい状況下でこそ、にぶく光ってないか。入水心中で遺体が見つかった日にちなむ「桜桃忌」は6月19日。(北)

 

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