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金曜時評

「財産」を生かそう - 編集委員 辻 恵介

 「NIE」(エヌ・アイ・イー)という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは「Newspaper in Education」の略で「教育に新聞を」といった意味になる。新聞界と教育界が協力し、新聞を活用した学習の普及を目指すものだ。児童・生徒の学習意欲を高め、情報活用能力を啓発するなど、広く教育に資することや、活字文化を守り、育てることも目的としている。

 先週末、奈良市内で「県NIE推進協議会」の今年度の総会が開かれ、各学校の実践者や各新聞社代表、来賓として県教委や小・中・高校の各校長会代表らが出席。活動の指針となるルーブリック(評価基準)の書籍化などの活動方針を確認した。

 具体的な活動は、毎年春に「実践校」を決めて、各新聞社とその学校が連携し、新聞社の記者らが出前授業を行ったりするものだ。今年度は奈良市立三碓(みつがらす)小、同伏見中、生駒市立上(かみ)中の3校が「継続校」に。十津川村立十津川第一小、生駒市立大瀬中、県立西和清陵高の3校が「新規校」となった。

 毎年実践した事例は、担当した各学校の先生が取り組みの写真などを用いて「報告書」という形でまとめ、冊子にされる。実践の経過(授業内容)が詳しく分かり、読んだ先生はそれを参考にして自分の授業で活用することもできる。だが残念ながらNIEの活動は、先生や教育委員会の関係者でも知らない人が多く、これまで蓄積されてきた「財産」が十分に生かされていないのが現状で、実にもったいない話である。

 だが、「追い風」も吹き始めた。小中高校の「学習指導要領の改訂」が今後段階的に行われていくが、読解力の向上や、自分で判断して「生きる力・生き抜く力」を育むことなどがそこに盛り込まれ、NIEの活動とリンクするようになった。「18歳選挙権」導入に伴う主権者意識の醸成、メディア・リテラシー(情報を評価し、識別する能力)教育などが、その一例だ。

 最後に、昨年の活動の中で評価が高かったのが「まわし読み新聞」だった。小学生から高齢者まで、さまざまな世代の4人程度が1つのテーブルに座り、複数の新聞を読み合う。自分が関心のある記事や広告を切り抜き、選んだ理由を発表。模造紙に貼り、壁新聞を作る―という作業だ。

 新聞が世代を超えたコミュニケーションの道具になるという、画期的な取り組みだった。NIE活動の可能性が、また一つ広がったものとして、大いに注目される。

 

 

 

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