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金曜時評

辞職して会見せよ - 主筆 甘利 治夫

 まもなく6月県議会が始まる。例年なら役員改選で議長候補の名前が取りざたされるところだが、今のところ静かだ。その議長の資質が問われている。議長は県議会を代表するもので、知事と対等な政治力や、人格・識見が求められる。

 議長の岩田国夫氏と暴力団元組長との「黒い交際」問題を本紙が報じて、まもなく1カ月になる。当初、本紙に対しては「(暴力団関係者と)会ったことも関係したこともない」などと全面否定した。同様に、議会各派連絡会でも否定していたという。出席した議員の皆さんは、それぞれの選挙区で有権者から選ばれてきた。その議員の前で虚偽の発言をしたわけだ。

 今月7日に弁護士を通じて公表された文書のなかで、少なくとも「暴力団関係者と2回会った」ことを明らかにし、暴力団関係者との交際の事実を認めた。

 一連の岩田氏の言動は、とても県議会を代表する人物とはいえない。

 報道機関の使命は、国民の「知る権利」に応えることで、憲法に保障された民主主義の根幹に関わる重要なことだ。本紙が県民の「知る権利」に応えるべく取材、報道活動を続けてきたのも、物言えぬ人々の代弁者でありたいと思うからだ。これまで公権力に対して何度も何度も問うてきたことは、読者の知るところだ。

 芸能界でも、タレントの島田紳助氏が暴力団関係者と付き合いがあったことを理由に引退したことはよく知られている。

 政治家と暴力団との関係をみても複雑だ。岩田氏の問題で、現職県議らに取材を求めると、「けしからん」と怒るのではなく、言葉があいまいになる議員の多さが不可解だった。なかには「他にも暴力団と付き合いのある県議はいる」と断定する議員もいたから、いずれ明らかにしなければならないだろう。

 報道直後から、岩田氏擁護の県議や、「社会正義」を標ぼうする弁護士の不信な動きが伝えられたり、闇の深さを知る。

 権力の側にある人たちが、裏で反社会的勢力とつながっていることは、やはりおかしい。県議会が「暴力団排除条例」を決め、暴力団追放大会で議員らが「暴力団根絶」の挨拶をする。そこに出席している市民は本気で生活を守ろうとしているが、裏でつながっている議員がいては、茶番でしかない。だからこそ、そんな議員の本当の姿を市民に明らかにしていきたい。

 まず岩田氏は、虚偽の説明をした同僚県議に謝罪するとともに、記者会見の場で正直に語るべきだが、会見も開けないような情けないものだ。だからこそ、どう責任を取るかをみたい。議長の辞任は当然だが、議員としてもいかがなもか、明確にしてほしい。もし、来年の県議選に出るなら、禊(みそ)ぎの意味を込めて有権者の審判を受けたらいい。

 議会や所属する自民党が何も対応せず、黒い議長をよしとして見逃すなら、本紙は追い続けるだけだ。 

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