「全国の子どもたちに夢を与え、青少年育成に役立てばと一層努力していく所存であります」。日本相撲協会のホームページから引用した。地方巡業について、巡業部長の春日野親方が語ったものだ。

　このあいさつがしらじらしく聞こえるような、巡業現場のおそまつ続きである。8日の静岡巡業では、力士との「ちびっこ相撲」に女子児童の参加を認めなかった。

　今年から土俵に上げよという話ではない。静岡場所では毎年のように女子が土俵稽古に参加していたという。協会の方針転換で唐突に「男子のみ」が決まった。

　女子に垣根を設けてこなかったのは、協会に冒頭のような思いがあるからだろう。一転排除となれば、地方巡業の意義に関わる。気落ちしている子もいるというから、これは夢を砕く所業だ。

　地方巡業は相撲の普及や地域活性化を目的に行われており、女人禁制の議論とは次元が異なる。土俵から女子を排除するなら男子相手の相撲も土俵下でとるのが筋だろう。

　救命中の女性や稽古を楽しみにしていた女児。しきたりの前に善意や夢が吹き飛ぶようでは、国技の名が泣く。(増)