金曜時評

実態を知ってから - 編集委員 松岡 智

 県内有効求人倍率が最高値を更新するなど、県内企業の採用意欲は景気回復傾向を背景に堅調だ。一方で大手企業が人材確保のためのさまざまな働き方改革方針を示す中、県内で中心の中小企業、小規模事業所では根強い人手不足感が続いている。

 県の新年度予算の中に、企業の人材確保、定着に一石を投じるものがある。県はこれまでも、働く意欲のある人への再就職支援に諸施策を講じてきたが、高卒離職者への支援で新たな施策を打ち出している。

 その一つが離職原因に関するアンケート調査の実施。県内事業所での高卒者の就職3年目までの離職率が約40~50%とする厚生労働省の調査に対し、県独自に実態把握をしようとするものだ。

 当たり前だが、課題の実相を知らずして効果的な対策、支援は望めない。調査対象は十分な情報がなかった県外就労者を含む、高卒後3年までの全就職者を予定。離職理由を正確に捉えることを主題とする。

 というのも、離職の原因が従来から挙げられる、就労者の意識と実際の仕事とのミスマッチだけではないと考えられるからだ。スキルアップのための学び直しや、より条件のいい職場への転職、若い労働力を使い捨てする企業側の姿勢などが離職の理由かもしれない。今回の調査はそんな部分に光を当てることになる。今後、教育関係者らにより作成されるアンケートの内容と結果、分析、対策によっては、離職者支援にとどまらず、人材の定着促進とともに高校生への就職指導の転換や、企業の意識変革をうながす可能性もあり得る。

 離職者支援に対しては、どこまで面倒を見続けるのかといった意見もあるだろう。しかし子供扱いではなく、貴重な人材として捉えるなら、県がつながりを保っておくことはマイナスにはならないはずだ。県外の奈良県人会の若手メンバーらが、何らかの形で古里に貢献し、活性化に寄与したいとの思いを持っていることはよく耳にし、実行例もある。県外就労者であっても、面倒見のいい県への愛着が、将来的なU、Jターンへつながることも否定はできない。

 関連の新規予算では普通科高校での就職の指導の強化も視野に、再就職支援教員の配置も予定される。県内の企業、経済団体でも、長期的視野での人材確保、定着に多様な方策が検討されている。今回の取り組みはそれらと同様、端緒となり進展をもたらす要素がうかがえる。各方面への波及効果の点でも今後を注視したい。

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