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金曜時評

問われる政権運営 - 編集委員 増山 和樹

 衆院選から間もなく1週間。いわゆる3極の候補が支持を訴えた県内選挙区はいずれも自民党が勝利し、比例区を含めて4議席を得た。民進党は県1区で守り続けた議席を希望の党の旗の下で失い、県内の選挙区は自民一色となった。

 中選挙区制の時代を含め、県内の選挙区を自民党が独占したのは平成12年に行われた第42回衆院選だけだった。今回と自民一色の結果は同じだが、得票状況は大きく異なる。

 平成12年の選挙では民主党(当時)の候補が各選挙区で自民党候補を追い上げ、比例区での復活当選もあった。今回は大接戦となった1区を除き、次点である希望の党候補の得票数は、自民党候補の半分にも届かなかった。民進から希望への合流は、あまりにも不確定要素が多かった。

 民進党の前原誠司代表は反自民を掲げて野党の大結集を目指したが、政界にも国民の間にも、その機運があったとは思えない。「民進」の名を捨ててまで勝負に出るほどの土壌は育っていなかったということだろう。むしろ、希望の党の発足や合流騒ぎの中で、本来最大の関心事であったはずの森友学園や加計学園の問題がかすんでしまい、自民党は絶対安定多数を上回る大勝利を手にした。

 だが今回の大勝が、安倍政権の5年間に対するOKサインでないことは心しなけばならない。奈良新聞社が今回の衆院選にあわせて行った世論調査では、安倍政権の経済政策について、「評価しない」が「評価する」を上回る。消費税の増税と憲法改正についても、「反対」「改正すべきではない」が肯定数を上回った。

 今回の選挙を経たことで、疑惑を深める森友・加計学園問題が精算されたわけでもない。安倍晋三首相が自信たっぷりに名付けた「仕事人内閣」は、国民が仕事ぶりを見る間もなく、解散風に吹き飛ばされた。

 大勝を受け、安倍首相は「今まで以上に謙虚で真摯(しんし)な政権運営に努めていく」としたが、うのみにはできない。森友・加計疑惑はもちろん、消費税増税や憲法論議についても、自身の言葉通り「謙虚に丁寧に」説明責任を果たすことが求められる。国民はこれからを見ている。

 野党は一刻も早く態勢を整え、与党と向き合う必要がある。“戦犯”への憎悪を募らせていては選挙前の混乱を引きずる。1強自民にどう挑むか、新党参戦下の国会論戦が、今後の世論を形成する。

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