金曜時評

回り道に光明あり - 編集委員 松岡 智

 7月の県内有効求人倍率で平成元年以降の最高値を更新するなど、県内企業の採用意欲は高い状態を保っている。一方で人手不足感は根強い状況。売り手市場での学生の大企業志向や高卒者にまでおよぶ大企業の囲い込みなどで、中小を中心とする県内企業も人材確保には苦慮しているようだ。

 大企業ばりの働き方改革も打ち出しにくい中小企業に対応策はあるのか。消極的に映るが、採用がままならないなら現有人員の離職を防ぐ方策を、まず実践すべきだろう。厚生労働省の調べでは、平成21~25年卒業者の県内事業所での就職3年目までの離職率は、高校生が42・6~51・5%(全国35・7~40・9%)、大学生は35・5~41・0%(同28・8~32・4%)の範囲で推移。いずれの年も全国平均より数値が高い。「入り」が少なければ「出る」を抑えるのは経営の基本。回り道のようだが、離職を減らす働きやすく魅力ある職場構築への方策が、後につながる近道にも思える。

 興味引かれる動きがある。経営者でつくる県中小企業家同友会の一部企業では、組織の「人を生かす経営」への原点回帰の行動を始めている。企業内教育の充実や利益が労働者に還元される仕組みづくりなど、就職後に社内で成長できる環境、経営者と労働者が仕事上のパートナーとの視点の形成を図る取り組みだ。もちろんその先には、離職防止と求職者に注目される企業の確立といった思惑がある。

 もう一つ、県内経済関連団体の関係者、経営者らからよく耳にするのが、県内企業の実力、実績が県民、特に若い層に十分に伝わっていないということ。頑張っていれば自然に伝わるはずとのスタイルは、さまざまな形で情報を入手している若者らにはなじみにくい。むしろ先進的手法も含め多様な方法、機会を捉えて積極的に自社を発信し、学校現場を含む若年層に接近する方法を検討する姿勢が必要だろう。

 人材不足を高齢者や一時離職中の女性、外国人などに求める方法もある。ただ、事業の将来への継続を考えれば、バランスの取れた年齢構成の組織にしておく視点も忘れてはならない。地道にも見えるが、離職を減らす身の丈に合った働きやすさの実現など、社員が外部に誇れる職場を築くことは人材確保への有効なカードの一つになる。もちろん前述の事例以外にも各企業に応じた魅力づくりの方法があるだろう。もっとも、それにはまずトップの意識改革が不可欠なのは言うまでもない。 

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