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金曜時評

=弱点克服で実現を - 論説委員 北岡 和之

 県が発行した平成29年版「100の指標からみた奈良県勢」という小冊子が面白い。各分野の全般にわたる統計データ集で、切り口を間違えなければ、正しい県の全体像が浮かび上がってくるのではないか。

 注目した指標の一つが「県民所得」。内閣府がまとめた26年度の全国データだ。都道府県別に1人当たりの県民所得額が並んでいて、本県は全国35位の253万4千円。全国平均は305万7千円で、近畿2府4県のうち本県のほかは、滋賀312万6千円(8位)▽京都302万8千円(12位)▽大阪301万3千円(13位)▽兵庫284万4千円(22位)▽和歌山279万8千円(25位)―となっている。

 この数字からうかがう限り、県民の暮らしは厳しいと感じるしかない。だが、そう断定するのは早計かもしれない。

 別のページにある「家計消費支出額(2人以上の世帯)」の統計。1世帯当たりの1カ月消費支出額で、こちらは28年の総務省のまとめ。全国平均28万2188円に対し、本県は全国5位の32万3726円。近畿では続いて、滋賀29万9756円(14位)▽京都27万4853円(34位)▽兵庫26万4958円(38位)▽大阪25万1435円(43位)▽和歌山24万7243円(45位)―。所得は少なくても消費支出は惜しまないライフスタイルなのだろうか。

 年齢別の人口構成や労働状況、貯蓄などもっとたくさんの指標を分析しないと、本県がどれだけ暮らしやすいかのイメージもつかめない。ただ、県の経済・産業が強くなく、弱点の一つであることは、掲載されているデータからも理解できる。

 その経済の基盤、働く場を創出していく支えとなるのは、荒井正吾知事は高速道路だと指摘する。高速道路で物流が良くなれば、内陸部でもモノの生産ができる。先日の定例記者会見で、荒井知事は「空港と港湾のアクセスは工場立地の必要条件」とし、京奈和自動車道が全線完成すれば大きな威力を発揮すると予測した。今月19日、京奈和自動車道は御所区間(橿原市新堂町―五條市居伝町、13・4キロ)が全通し、和歌山側とつながった。残りのうち、橿原北インターチェンジ(IC)―橿原高田IC(4・4キロ)間について、荒井知事は「2、3年のうちに用地買収を終えて着工にこぎつけたい」と意気込む。

 統計データから浮き彫りになる県の弱点克服を具体的に進めていく中で、理想的な地域像を確かなものにしたい。

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