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国原譜

会社の近くを歩いていたら、国道沿いのガ…

 会社の近くを歩いていたら、国道沿いのガソリンスタンドから、従業員の若い女性が「帽子、帽子」と叫んで走り出てきた。女性は横断歩道に落ちた帽子を拾い上げると、歩道にいた高齢の女性に届けた。

 国道を自転車で渡った高齢女性が、帽子を風に飛ばされたらしい。歩行者用の信号は既に青が点滅していた。

 次の青を待っていたら、帽子は片側2車線の国道でもみくちゃになっていただろう。2人は縁もゆかりもないはずだが、ガソリンスタンドの女性は飛び出さずにいられなかった。

 九州北部の豪雨災害は、被災者の救助と行方不明者の捜索が続いている。惨状が次々と明らかになる一方、日常生活を一変させた大災害に住民が協力して立ち向かう姿も伝えられた。

 組織的な捜索や復旧は行政が頼りだが、生活を精神的に支えるのは、声を掛け、励まし合う住民同士のつながりだろう。

 何気ない日常の一コマに、非常時に開花する人の温かさが隠れている。そうせずにはいられない何か。国や地域に関係なく、そこに人が住む限り、今もたくさんのつぼみが膨らんでいる。(増)

 

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