金曜時評

アメリカを考える - 論説委員 北岡 和之

 米国のトランプ大統領が就任演説を行ったのが1月20日。「これからは行動するときだ」(就任演説)という宣言に続いて何が飛び出すのだろう。国際社会における位置から大統領の発言が世界の注目を集めるのは仕方がない。だが大切なのは、日本の、しかも地方から、「アメリカ」とはどういう存在かを考えることだ。

 私たちは「アメリカ」をどうイメージして、どう付き合ってきたのか。新大統領は「アメリカ」を変えるのだろうか。トランプ大統領の就任演説は、とても興味深いものに思える。

 まず注目されたのは「何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた」「工場は次々と閉鎖され、残された何百万人もの米国人労働者を顧みることなく、国外へ移転していった」という発言。これが基本的な現状認識だ。その上で「貿易、税金、移民、外交など全ての決定は、米国の労働者と家族の利益となるようになされる。物作り、企業、雇用を奪う外国から、われわれは国境を守らなければならない」と訴える。

 あえて言うまでもなく、現代のグローバル化した世界で、特定の国による一方的な犠牲などあり得ない。米国が世界の工場だった時代は過ぎ、産業構造は変わった。それが米国産業・経済衰退の要因であり、いわば歴史的必然といっていい。米国に進出しているわが県の産業があるとして、トランプ大統領の言い草だと、そのうち日本企業は全て悪者にされかねない。

 雇用を創出しようというのはいい。だが大事なのは、復古的になるのではなく、新しい段階における産業を工夫して生み出してゆくことだ。それは世界的な競争でもある。国家レベルだけでなく、地方からも産業創出に必死になって取り組むことだ。

 「さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている」というのがトランプ大統領のイメージらしい。この発言は、過疎化が進む県南部や山間地域の衰退のイメージと重なる。高度産業化がもたらした息苦しさを、とりわけ世界の先進地域では逃れられない。国家・政府で、また地方で自立した独自の取り組みが必要だ。

 ただ一方で、「アメリカ」を象徴する新大統領の「肌が黒くても、白くても、褐色でも、愛国者が流すのは同じ赤い血だ。同じ輝かしい自由を享受し、同じ偉大な米国旗に敬礼するのだ」という発言。これに対する異議をうまく説明するのは難しい。

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