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金曜時評

重み増す過疎対策 - 編集委員 松井 重宏

 平成29年度の政府予算編成に向けた県の要望活動で、新たに御所市と三宅町、高市郡2町村を過疎地域に指定するよう求める項目が盛り込まれた。これまで山間部のイメージが強かった過疎地域だが、盆地中央の町なども要望対象となり、地元住民からは驚きの声も出そうだ。少子高齢化というよりもインパクトが強く危機感を呼ぶ「過疎」の2文字が、県内でも事態の深刻さを物語っている。

 過疎対策は地域振興の軸となる古くて新しい行政の重要課題。その解決に向けて過疎地域自立促進特別措置法に基づく対策が全国で平成32年度まで取り組まれており、県は今回、同措置法に基づく過疎市町村について、昨年の国勢調査実施を踏まえた指定拡大を国に訴えた。

 法律に基づく国の過疎対策は、戦後の高度経済成長で地方から都市部へ人口の流出が加速する中、昭和45年に10年間の時限立法としてスタート。以来、名称や内容を少しずつ変えながら新たな立法、期間延長を繰り返して、現在に至っている。本来、特別措置法は特定の緊急課題について期間を限定して適用、強力な取り組みで課題解決を図るのが目的だが、過疎対策の場合は今も出口が見えず、対策が事実上、恒久化している。

 こうした中で県が行った提案は、過疎対策事業債のソフト分について市町村の上限額を超えて県単位で弾力的に運用できるよう求めたほか、過疎地域以外の市町村や県が広域連携して同事業債を起債できるよう制度改正を要望する内容。また対策に遅れを生じさせないため、最新の調査を踏まえた対象地域の指定拡大が必要と訴えた。予算確保と併せて制度の拡充、規制緩和を求めており、県と市町村が連携する「奈良モデル」の推進を強くアピールしている。

 既に過疎地域に指定されているのは、法改正があった平成26年4月現在で全国の市町村のうち46%に当たる797市町村。人口比率は8%余りだが、面積は国土の半分以上を占めている。さらに県内に限れば、みなし過疎を含む15市町村で人口が県全体の6・7%にとどまる半面、面積はほぼ4分の3に当たる74・5%に達する。

 県内では今年10月13、14日に橿原市などを会場に「全国過疎問題シンポジウム2016inなら」が開かれる。同催しは全国持ち回りで、県開催は初。県内外に過疎問題をアピール、併せて「奈良モデル」の取り組みを発信する機会になりそうだ。

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