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金曜時評

高齢者の外出促進 - 編集委員 辻 恵介

 長崎市で、路上の階段の上り下りを助ける「電動てすり」の実証実験が行われているという話を聞いた。既存のガードレール状の手すりに沿って、コの字を下に向けたような形状のパイプが動くもので、買い物袋を引っ掛けて運ぶことも可能で、高齢者らに好評のようだ。同市は2016年度には、現在の全長約13メートルを倍以上に延長する方針だ。

 若者は坂の上の暮らしを避け、足腰が弱った高齢者も平地へ降り、空き家も目立つようだ。坂の街らしい住民対策で、高齢者の外出促進も狙っているという。

 さて地元に目を転ずれば、県をはじめ、各市町村の予算(案)が、ほぼ出そろった。吉野町では「デマンドタクシーの充実」が盛り込まれた。隣の大淀町では4月4日から、デマンド型乗合タクシー(よどりタクシー)が運行を始める予定という。1回200円の有料運行だが、高齢者らの通院や買い物の強い味方になってくれそうだ。

 3月10日の県議会一般質問では、田中惟允議員(自民)が、タクシー事業者と連携してスマートフォンなどのICT(情報通信技術)を活用した新交通サービスを実現すべきだ、と要望。これに対して荒井知事は「過疎化が進む地域での移動手段確保の面で、ICTの活用が重要」と答弁した。

 知事は、県南部で高齢者に実験的に配布を予定している「健康スマホ」に「交通スマホ」を加えるなど、積極的に検討していく姿勢を示した、という。

 近ごろテレビCMなどでも話題の「ICT」だが、優先順位をつけて必要とされている分野から取り組むのがベストだろう。

 前日9日の一般質問では、佐藤光紀議員(なら維新の会)が「県の教育ICT(情報通信技術)に関するハード、ソフト両面の整備が全国の都道府県で最も遅れている」と指摘した。知事は「教育ICTは重要だが、ICTだけで教育が行われる訳ではない。ヒューマンな部分なども大事」と答えていた。これも1つの見識だろう。

 安倍首相は「一億総活躍社会」の実現を掲げているが、その前提の一つとして、高齢者が積極的に外に出て社会参加し、買い物にも行けるような暮らしができるようにしていく必要がある。そのためにも“足”の確保は重要だ。

 冒頭の長崎の話ではないが、それぞれの地域において現時点で何が一番必要なのかをよく考えてほしい。なおかつ、長期的な視点に立った高齢者対策を望みたい。

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