近鉄八木西口駅、新駅と併存可能性も 近鉄が廃止から転換、荒井・奈良知事は歓迎
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近畿日本鉄道(=近鉄、大阪市)の運賃改定を巡り、14日に開かれた国土交通省運輸審議会の公聴会で荒井正吾知事の公述に対する近鉄の回答文書が奈良県に提出された。その中で、近鉄は奈良県橿原市の県立医科大学付属病院前に計画する新駅設置について、「八木西口駅の廃止を条件としない」ことを明記されていたことが20日、分かった。同社はこれまで新駅と八木西口駅の併存は難しいとの立場を取っており、併存を求める橿原市との議論は平行線をたどってきた。近鉄の方針転換に対し、同日の定例記者会見で荒井知事は「驚くべき変化」と歓迎した。
近鉄は「公聴会での県による公述に対する回答」として県に19日付で文書を提出。県立医科大学周辺のまちづくり(新駅設置)については「新駅設置については八木西口駅の廃止を条件とせず、費用負担、運営方法等に関し、今後協議をお願いいたします」と記している。
新駅は、老朽化が進む県立医科大学(橿原市四条町)を約1キロ南西に位置する旧県農業研究開発センター跡地に移転、キャンパス跡地に新病棟を整備する計画に合わせて、病院利用者の利便性向上を図ろうと設置案が浮上した。
新駅は近鉄橿原線と大和高田バイパスの陸橋が交差する付近を予定しており、近鉄は新駅設置にあたっては「事業運営上の負担になる」として北側約800メートルにある八木西口駅の廃止を条件として提示。一方、橿原市は新駅と八木西口駅の併存を一貫して主張し、地元の今井町自治会も八木西口駅の存続を求めて要望書や署名を提出してきた。
ところが、2021年3月の市議会で、市は近鉄が「近接地での併存に応じかねる」と文書で見解を示したことを報告。これ以降、市は近鉄に再考を求めておらず、併存は事実上困難になったとみられていた。
今回の方針転換について荒井知事は「八木西口を廃止して新駅を設置するか、新駅をあきらめるかの二者択一だったが、併設でもいいというのは驚くべき変化。望ましいこと」と歓迎。橿原市市街地整備課の担当者も「併存を求めてきた市の意向も聞き入れてくれる可能性が出てきた」と喜んでいる
一方、奈良新聞の取材に対し、近鉄広報部の担当者は「八木西口駅の存続を求める地元の要望は強く、同駅の存続はやむを得ない。県立医大の新キャンパス整備や周辺のまちづくりには新駅の設置が必要だ」と説明。今後、両駅の併存を前提に3者で費用負担や運営方法について協議を進めていくという。