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時考のたね―ウィズ・アフターコロナの歩み方②‐大和化学工業、平山会長

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インバウンドの方向性について語る大和化学工業の平山会長

大和化学工業会長

 平山 雅英氏(70)

 

 ≪インバウンド(訪日外国人)に対する観光施策は、新型コロナウイルス禍で見直しを迫られている≫

 

 国内観光客はもとより右肩上がりだったインバウンドの受け入れは、新型コロナ収束と同様まだ見通せません。国策でのインバウンド戦略に観光立県を標榜(ひょうぼう)する県も乗った形でしたが、見直しはやむを得ないところでしょう。

 

 コロナ禍で県内の観光・宿泊関連業界が本当に厳しい状況なのは見聞きしています。ですが今だからこそ、インバウンド需要に軸足を置き過ぎていたこと、彼らの好き放題を認めていたことは反省、改善すべきではないでしょうか。

 

 ≪インバウンドで国内観光地が潤っていた時期、全国いたる所で外国人の姿が見られた。そんな折、旅先で残念な体験があった≫

 

 数年前、先進国首脳会議が開かれ、料金並みの格式があると思われた北海道のホテルに宿泊したところ、多くのアジア系外国人と同宿になりました。朝食はブッフェ形式でしたが、彼らは自分たち以外に宿泊客がいないかのように大声で横柄に振る舞い、必要以上に食べ物を取り、食べ散らかす状況でした。

 

 私はだまって耐えていたのですが、あるご婦人がホテルのマネジャーらしき人と話しているのを目にしました。その後ご婦人は私に「あまりにひどいので文句の一つも言いたくて。二度と来ませんということも含めて」と話され、苦笑しておられました。何をしてもお金をたくさん落としてくれるゲストが上客との考えがホテル側にあったのかもしれません。私も今後、そのホテルを利用する気はありません。

 

 ≪インバウンドでの好調さの一方、大阪や京都など周辺地域と比べると奈良の観光は埋もれがちに思えた。先の経験とともに、コロナ禍は思考の転換の機会だと捉える≫

 

 インバウンド需要はすぐには回復しないでしょうし、以前のままでは周辺との競争にも負けてしまう。提案したいのは、どんな宿泊客でも受け入れる姿勢からの転換です。一定のルールを守れる人だけが宿泊でき、施設を利用できる仕組みを構築するのです。

 

 「お高くとまっていると思われる」「気軽に来県してくれなくなる」との声も聞こえてきそうですが、わざわざ奈良に来ていただく人に安心感と満足感を提供するための方策なのです。ルールを順守できる人だけが宿泊できる洗練された観光地となれば、受け入れ側のステータスが上がり、従業員らの誇りにもつながります。利用者側も宿泊できたことが自慢になるのではないでしょうか。

 

 とにかく売り上げ、との目先の発想だけでは観光地が消耗品化する懸念があります。サービスを提供する側、受ける側双方が誇りと満ち足りた心を抱けてこそ、自他ともに認める良い観光地への扉が開けるのだと思っています。

 

 当初はとまどい、反発があるかもしれません。でも一見遠回りに思える方法が結局は成功への近道であった、という例は少なくありません。真の観光立県のために、コロナ禍で失ったものを取り返そうとただ利に走るのか、思考を変えつつより洗練された大人の空間を実現するのか。今こそ考えるべき時期に来ている気がします。

 

 昭和26年生まれ。県立御所工業高校卒。45年大和化学工業に入社し専務取締役、代表取締役社長などを歴任。令和3年6月から同社会長。県中小企業家同友会相談役。

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