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リーグ戦22連勝で負け知らず! - 帝塚山大女子バレーボール部 その強さを探る

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   2021年度関西大学バレーボール秋季リーグ戦で、前年度に続き優勝した帝塚山大学女子バレーボール部。2020年度秋季リーグから22連勝を果たすなど関西地区では安定した強さを維持している。12月に行われた令和3年度天皇杯・皇后拝全日本選手権大会ファイナルラウンドにも県勢で男女を通して初出場するなど、次シーズンに向けさらにチーム力を高めている。同チームの強さの秘密を取材した。【有賀 哲信】

 

 

 

≪2021年度秋季リーグ戦での優勝を喜ぶ部員≫

 

 11月6日、帝塚山大学東生駒キャンパス体育館で行われた2021年度関西大学連盟女子1部の秋季リーグ最終戦で、帝塚山大は神戸新和女子大を3―0のストレートで下し、見事リーグ2連覇を果たした。

 

 第1、2セット、帝塚山はサーブで攻めてブロックで仕留める持ち前の攻撃力で連取。続く第3セットは、ラリーに持ち込み競り合う神戸新和女子に、帝塚山後衛陣が粘り強く拾い、ライトの山本輝、レフトの中野樹里や横田希歩が威力のあるアタックで流れを渡さなかった。

 

 リーグ個人賞のブロック賞とレシーブ賞を受賞した中野樹里(4年)は「去年リーグ優勝して追われる立場になったが、守りに入らず攻める気持ちを忘れず持ち続けた。チーム全員が当たり前のことを必死にやってきた結果」と全員で手にした優勝という点を強調した。

 

 同じく最優秀選手賞とスパイク賞を手にしたキャプテンの吉田美海(4年)は、「去年は優勝を目標に一戦ずつ戦った結果、優勝を手にしたという感じだったが、2連覇がかかる今年はプレッシャーも大きかった。スターティングの7人がうまく行かなくても、ベンチに頼れるメンバーのいることが心強かった」と、選手層の厚さをうかがわせた。

 

 県勢女子初のリーグ2連覇は、2016年の龍谷大以来だが、大きく異なるのは龍谷大が同じ年の春、秋での連続優勝なのに対し、2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で春季リーグが中止となったため、帝塚山は前年度の秋に続き、翌年度の秋に優勝している点にある。

 

 同一年度内での優勝ならば、春強かったチームがそのまま秋も順当に勝ち上がったという見方もできる。しかし年度をまたいでの優勝は、長期的ビジョンで安定した強さを持つチーム作りができているということにもなるだろう。

 

 帝塚山は11月20、21の両日には、「2021年度PhitenCIP関西バレーボール大学男女選手権に出場。決勝で神戸新和女子を2―1で下し、出場33チームの頂点に立ち、いよいよ本番の全日本大学選手権(インカレ)に挑んだ。

 

 2020年度の全日本インカレは第8シードで2回戦からの出場となり、初戦の新潟医療福祉大を3―0で下したが、3回戦で大阪国際大に2―3で競り負け準決勝進出を逃し16強で終わった。「今年こそセンターコート(準決勝から)」の思いを胸に挑んだ今年度――。しかし結果は2回戦からの出場で、初戦の東京女子体育大に0―3で敗れた。

 

 チームを率いる本田知広監督は「東京女子体育大は強豪校。そこを勝っても続いて東海大(同年度の優勝校)との対戦となる」と厳しい戦いになることはあらかじめ覚悟していた。

 

 吉田や中野ら4年勢は「関東勢の速さや高さ、スパイクの重さには今のままでは通用しない」と口をそろえる。全日本インカレの女子は、1955年の第2回大会で京都学芸大(現京都教育大)、続く第3回に武庫川学院女子大が優勝して以来、関西勢の優勝はなく、ほぼ関東勢が制している。関東の壁を越えて「インカレでセンターコート」の目標達成は新チームに託した。

 

 帝塚山大学では強化指定クラブとして硬式野球部やラグビー部、レスリング部が指定を受けているが、女子バレーボール部もそのひとつ。2007年6月の奈良新聞紙面には強化指定される直前のようすが以下のように記されている。

 

 「帝塚山大学は今年(2007年)3月、元日立コーチでスロバキア女子ジュニアナショナルチームの監督も務めた首藤幸一さん(43)を招き、強い女子バレーボール部作りに乗り出した。(略)同部は9部まである関西大学バレーボール連盟のランクで現在7部に所属。部員の平均身長は158センチ、部員数も6人と1人欠けても試合ができない状況だ。(後略)」

 

 優れた指導者を招き、帝塚山大はその後、2014年11月に1部に昇格し、2015年には全日本インカレに初出場を果たしたが、2016年の秋季リーグでは9位と低迷していた。

 

 そこで2017年、強豪大阪国際大を経て大阪女子短大を指揮してきた本田知広が招かれた。

 

 本田監督が就任した年の秋季リーグ1部10位。1部残留を懸けた入れ替え戦を制し、翌年度の春リーグもかろうじて1部で戦えることになった。

 

 2018年度からは本田監督が自ら選んだ選手が帝塚山大バレーボール部に入部してくる。

 

 本田監督は「うちには超一流選手はこない。ほかの大学が声をかけないような選手でも、運動能力の高さなどを見て選んでいる」とその選択方法を明かす。

 

 「関係者からは『よくあんな選手とったな』と言われても、結果を出せば『あの選手はどこの子?』と聞かれる。それだけノーマークの選手を多くとっているが、頑張れる子は絶対に成長する」と話す裏には、選手を育てる自信がみなぎっている。

 

 しかし、2018年の春リーグは自らが選んだ選手でなく、4年生を中心にした既存の選手で臨んだ。自らが選んだ1年生を起用すれば勝てるのはわかっていたが、あえてそのようにした。その結果、秋のリーグは2部で戦うことになった。

 

 本田監督は秋リーグを前に4年生を集め「このメンバーで続けるか、強いチームを作るか」と判断を選手らにゆだねた。その時の4年生選手は「自分たちが出れなくなってもいい」と、勝つことを望んだ。

 

 帝塚山大女子バレーボール部は1年生を中心に編成したチームで、2018年度秋季リーグを7戦全勝で優勝し、半期で1部に昇格した。2019年度は1部4位、そして続く2020年度に11戦全勝で初の1部優勝を手にした。

 

 「自分が勝ちたいエゴのチーム作りをしてきただけかも知れない」。自らの指導歴を本田監督はそう省みる。そこで帝塚山では何よりも選手たちの思いに寄り添おうとした。その結果が、4年生中心のチームで戦い2部落ちになった2018年春だった。

 

 自らの性格を「負けるのが嫌い」と話すほど、負け続けるチームを見なければならない苦しい日々が続いたが、じっと耐えた。「最初から監督の思いだけを優先させればチームはまとまらず崩壊していただろう。無理に作ってはダメだった」。

 

 選手の育成に際しては「選手ひとりひとりの適性を見極め、場合によっては選手自身がやりたいことよりも、もっと適性のある方向性を指し示すこともある」とし、指導初年度からVリーガーを輩出するなど、優秀な人材を育てている。

 

 

 

≪強さの秘訣は「選手自らが考える」≫

 

 練習に関しては特別なことはせず「当たり前のABC」と称し、ごく普通のことを行っている。

 

 そして、何よりも「選手自身に考えさせること」を重視する。ひとつのミスに対して、「なぜそのようなプレーになったのか」を選手に自己分析させ、最終的な目標を掲げさせ、そこに到達するために具体的にどんな練習をするのかを書かせた。最初は「頑張ります」という精神論寄りの感想文が多かったが、その度に書き直しを求め自己分析する習慣を身に付けさせた。

 

 仕事などで業務の改善に用いられるPlan(計画)→ Do(実行)→ Chek(評価)→ Action(改善)のPDCAサイクルと同様のもので、選手たちは大学を卒業後よしんばプレーから離れることがあっても、社会に出て大いに役立つ経験を積んでいることになる。

 

 吉田キャプテンは「自分のプレーを見返し考えるようになった」と話す。3年の横田希歩は「なぜと考えることで練習の質が上がった」とその効果を実感している。

 

 3年の大西風歌が本田監督の言葉で特に印象残ったものとして「全力でさぼれ」を挙げる。「中途半端に練習させて、監督が自己満足しても仕方がない」と本田監督は、練習中に選手らの集中力が欠けていると判断した場合は、きっぱりと練習を切り上げるようにしている。

 

 そのような行動は選手らの不安をあおる駆け引きをしているようにもとらえられるが、そうではない。「練習するときも精一杯なら、さぼるときも精一杯」とメリハリを付けることを求めた結果だ。

 

 自分自身を客観的に捕らえ自己分析できるようになれば、続いて自発的な行動がとれるようになる。練習をするのか、休みにするのかの判断も選手たちの自主性を求める。

 

 自己分析を通して自分が何をすべきかに気付き、それを自発的に実行できる選手が増えてきたことが1部リーグ優勝として実を結んだのだろう。

 

 「(1部リーグ初優勝の)1年目は引っ張り上げたところもある。しかし(2連覇した)今年は前年ほどうるさくは指導しなかった。体力的には楽だったが、精神的にしんどかった」と本田監督。選手たちを信じて見守るだけというのは、指導者としては相当の腹のくくり方が必要になってくる。しかし、選手たちは見事に期待に応えた。それは、「選手自らが考える」という自主性が部にしっかり根付いた証拠でもあるだろう。

 

 2021年の秋季リーグを有終の美で飾り、同年12月10日には天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会ファイナルラウンドのコートに立った。

 

 同大会でファイナルラウンドまで進出するのは県勢として初めてとなる快挙で、4年生にとってはチームで戦う最後の試合となった。

 

 「自分たち持っているもの出し切りたい。試合で吸収できることも多い。勝ちにはこだわるが、吸収して終われる大会にしたい」(吉田キャプテン)。

 

 そうして臨んだファイナルラウンド初戦の対戦相手はV1女子のトヨタ車体クインシーズ。結果はセットカウント0―2(23―25、19―25)で敗れた。

 

 

【4月からは新チームが始動する。リーグ2連覇、天皇杯・皇后杯ファイナル出場を経て、帝塚山大女子バレーボール部がさらに飛躍することを期待したい】

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