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社会

東京学芸大学名誉教授・木下正史 - 新春随想

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 新年おめでとうございます。1320年前の元旦の話です。「天皇は大極殿に出御して朝を受けた。その儀式は大極殿正門に烏形幢を立て、左側に日像・青竜・朱雀の幡、右側に月像・玄武・白虎の幡を立て、蕃夷の使者(新羅、蝦夷・隼人)が左右に分かれて並んだ。文物の制度はここに整った」と、『続日本紀』大宝元(701)年1月1日の記事は、元旦朝賀の儀式の様子を伝えています。

 

 律令には、元旦朝賀や即位式など国家最重要の儀式では、大極殿前に烏形幢と日月・四神を描いた高さ9メートルの7本の幡竿を立てる規定が見えます。この幢幡の図像は中国の道教的な世界観である陰陽五行説を基にしたものです。

 

 近年、藤原宮の大極殿院正門前の朝堂院朝庭で、この朝賀の儀式で立てた幢幡の柱穴が発掘されました。同じ頃に営まれた高松塚古墳・キトラ古墳の壁画に、幢幡と共通する図像が描かれていることが注目されます。

 

 この年、大宝の元号が立てられ、体系法典の大宝律令が制定されます。日本国号と天皇称号が定められ、30余年ぶりに遣唐使派遣が決定されます。律令制による中央集権国家・日本国を作り上げた画期的な年であったのです。その元旦朝賀の儀式は、新時代の幕開けを高らかに宣言する盛大なものでした。飛鳥・藤原の地で日本国が誕生した日の様子が目前に浮かんできます。

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