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多武峰観光ホテル、上村社長ーコロナに立ち向かう(1)

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「早く平日の営業が再開できるようになれば」と話す上村社長。後ろは談山神社十三重塔=桜井市多武峰の多武峰観光ホテル

 昨年から約1年半にわたり猛威を振るう新型コロナウイルス。収束はいまだ見通せず、県内企業にも深刻な影響をもたらしている。厳しい経営を強いられる中、各企業はさまざまな工夫をこらしながらコロナに立ち向かってきた。その取り組みに焦点を当て、コロナ後を考える。

 

 新型コロナウイルスの影響が特に大きい宿泊業。全国に知られた紅葉の名所、談山神社の真向かいにある桜井市多武峰の「多武峰観光ホテル」も大打撃を受けている。

 

 「売り上げはコロナ前と比べ9割以上減っている」。同ホテルを運営する近畿観光産業の上村晃生社長(61)は苦境を語る。

 

 同ホテルの売り上げの半分を占めるのが、3~6月と9~12月に関東方面から訪れる中高生の修学旅行と、7~8月に大阪など関西の私立中高が行う受験に向けた勉強合宿だ。しかし、新型コロナの感染拡大により、昨年からいずれも延期・中止が続いている。

 

 一般の宿泊客や団体客も大幅に減少した。向かいの談山神社は「大化の改新」の立役者、藤原鎌足を祭り、春と秋の蹴鞠(けまり)も有名だが、平日の宿泊客は1日1~2組にまで落ち込み、例年満室となるゴールデンウイークや年末年始も客室はほとんど埋まらなかったという。

 

 「リーマンショックや東日本大震災のときでも、ここまで客足が落ち込むことはなかった」。上村社長はコロナ禍の深刻さを強調する。

 

 「宿泊客が1日1~2組では営業すれば赤字になる」。上村社長は従業員らと相談して、昨年5月から平日の営業を取りやめ、週末だけ宿泊客を受け入れることにした。「平日に営業できないのは残念だが、ホテルを守るための選択だ」と前を向く。

 

 一方で、コロナ禍を逆手に取った取り組みも始めた。飛鳥や大神神社など近隣の観光名所に宿泊客を無料で送迎するサービスだ。客足が落ち込んだことで可能になった。

 

 ホテルでは感染対策を徹底。客同士の密を避けるため、食事は客室とは別の個室を用意して提供している。宿泊客からは「安心して利用できる」と好評だという。

 

 「早くコロナが収束して、平日の営業が再開できるようになれば」。上村社長は切に願う。

 

 

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