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【特別時評】果たせ社会的責任 西村発言は間違いか

 新型コロナウイルス感染の第5波が懸念されるなかで、いよいよ東京五輪が開幕する。東京都に4回目の緊急事態宣言が発令され、感染者が急増している。感染拡大防止に懸命な政府だが、防止策の一環として酒を提供する飲食店に、酒卸や取引金融機関からの社会的責任として感染防止のための働き掛けを求めたが、それを野党や一部与党、メディアなどから「金融機関への圧力、プレッシャー」と批判され、撤回する事態になった。本当にそれでいいのかと思う。

 渦中にいたコロナ対策担当大臣の西村康稔・経済再生担当相が発言を撤回はしたが「何としても感染拡大を抑え、終息させたい」という、強い意志を感じた。担当大臣に就任以来、休むことなく、500日近くを走り続けてきたからだろう。

 それだけに今回の問題が、衆院選を間近に控えているため、政府の及び腰や、野党が政治利用しているとの印象が強い。各社の世論調査で菅内閣の支持率は低下傾向にあり、対してコロナ対策に対案のない野党の攻撃材料になった感が否めない。西村大臣は自分の責任と言っているが、関係省庁とも調整のうえ、閣僚会議で決まった内容であり、果たして西村大臣一人の責任と言えるのだろうか。

 国難といえるコロナ禍で、この1年有半、学校や会社などあらゆる組織、団体、そして個人がそれぞれの社会的責任のなかで、時短や休業、イベントの中止といった自粛を続けてきた。それでも感染は止まらず、第5波が懸念されるまでになっている。

 3密を回避するために、国や自治体が、あらゆる機関、団体に協力を求め、自粛要請してきた。人の移動を少しでもなくそうと、会社や学校が自宅からオンラインでつないだり、出張や旅行なども自主的に回避した。とくに観光県・奈良は、観光客の姿が消え、ホテルをはじめ観光関係業者が窮地に立たされている。飲食店なども、時短要請や飲酒の提供を控えるなど自粛要請に応え、長期間にわたって休業する店もあった。全国でも同じだっただろう。

 法的根拠があるにもかかわらず、自粛要請に応じない店がある。国民全体の問題なのに、市民一人一人が、組織・個人を問わずに、それぞれの立場で社会的責任を果たさなければ、いつまでたっても感染拡大は続く。こうしたなかで、自粛要請に応えない一部の飲酒できる飲食店が焦点となった。だから酒卸、あるいは取引のある金融機関に協力を求めたわけだが、「圧力」などと問題視された。大学の休校や博物館の休館、「旅行するな」「東京からの発着はやめよ」など、数々の要請があったにもかかわらずだ。

 今、緊急事態宣言中の東京の感染者の増加は極めて深刻だ。専門家チームの座長は「これまでで最大の危機を迎えている」とし、政府の対策分科会の尾身茂会長も「8月初めに東京で3000人が感染、医療ひっ迫」と警鐘を鳴らしている。

 一極集中の東京を何とかしないと、国全体が疲弊する。ましてや五輪が開幕する。東京の問題は全国の問題だ。奈良にとっても死活問題といえる。酒卸業者も金融機関も、この国の一大事に手をこまねくことをしないで、それぞれの立場で社会的責任を果たすべきではないか。

 「東京を何とかする」ことが、全国を救う。これまでに休業要請や各種イベントの中止を呼び掛けてきたように、東京に抜本的な対策を講ずるべきだ。誰が何と言おうと批判を恐れず、国を救うという気概で臨めば、道は開かれる。感染拡大の恐れのある飲酒を提供している飲食店に対して、業界も金融機関も含め、関係しているすべての組織・機関挙げて協力要請すべきではないか。

 開幕する東京五輪を前に、とくに東京都における感染拡大を「何としても抑えたい」という西村大臣の思いがそこにあったと思うし、発言を撤回したが、間違っていたとは思えない。

 今、与野党ともに、政治家生命をかけて本気でコロナの撲滅、終息を考えている議員が何人いるのか。3カ月以内に実施される衆院総選挙への思惑ばかりではないか。与野党の一人一人の議員は、感染防止に向けて何をしているのか。時短もせず飲酒の提供をする飲食店に、野党はどんな対案を示したか。

 国民の生命を守る、そのもっとも大切なことが、今問われている。(特別時評 主筆 甘利 治夫)

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