吉野にオープン 古民家ジャズ喫茶 - 並ぶ復刻本 文豪の味も/ピアニストの柴田さん 今春、夫婦で移住

大阪出身のジャズピアニスト、柴田コウメイさん(66)が今年4月、吉野町平尾に移住し、妻ゆきさん(48)と2人で古民家を活用したジャズ喫茶「古民家パーラーフクバタケ」を開業した。コンサートスペースも設けられており、県南部の音楽シーンを大きく変えそうだ。
町立吉野北小学校にほど近い、築約100年の古民家。店内にはCDやレコードのジャズ音楽が流れ、明治~昭和中期に出版された美しい装丁の書籍の復刻本がずらりと並ぶ。
コウメイさんは京都外大軽音楽部でジャズを研究。24歳で渡米し、バークリー音楽大学を卒業した。ニューヨークバッカス音楽コンクールジャズ部門で優勝。帰国後は演奏活動以外にジャズ教室「スプーンフルミュージック」を主宰する。
ピアノ椅子の座板の修理に適した材料を求め、吉野ヒノキにたどりついたのをきっかけに吉野ファンになったという夫妻。県の音楽祭「ムジークフェストなら2018」では東大寺で演奏し、県内の音楽家らとのつながりが深まった。
住まいは空き家バンクで探した物件で、昨年末から約半年かけて日曜大工も楽しみながら改修した。教室も吉野に移転したが、田舎特有の長いバス待ちの生徒のために考えたのが喫茶の始まりだったという。
展示した復刻本はゆきさんのコレクション。町で新たに始まった「吉野まちじゅう図書館」に登録し、来店者は自由に手に取ることができる。文豪の嗜(し)好品を味わうメニューもユニーク。はちみつトーストにブランデーが香る「トースト水木しげる風」(300円)や織田作之助の小説「夫婦善哉」に登場する名店風のカレー(700円)などがある。
吉野に住んで空の広さと美しさを知ったというコウメイさんは「昔の人もきっとこんなきれいな月を見ていたのだろう」と話し、生活のリズムを取り戻し「健康になった」と笑う。何よりも心が開放され、子どものように無邪気に自然と向き合っている。
即興演奏で魅了するジャズの演奏。吉野でどんな音楽が生まれるのかが楽しみだ。11月23日午後2時からギタリスト井上知樹さんとの共演コンサートがある。入場料2000円。
喫茶店は午前10時~午後5時。月、火、金曜は営業。水、木曜のどちらかと土、日曜のどちらかは休み。問い合わせは同店、電話0746(32)5698。
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