「題目立」を世界遺産へ - 奈良・八柱神社の民俗芸能

ユネスコの無形文化遺産への登録を協議する政府間委員会が28日、アラブ首長国連邦のアブダビで始まった。奈良市上深川町の民俗芸能「題目立」(重要無形民俗文化財)が候補に入っており、早ければきょう夜にも結論が出る見込み。地元では10月12日の秋祭りに向けて稽古(けいこ)が続く中、登録実現へ期待が高まっている。
題目立は八柱神社の秋祭りで奉納される民俗芸能で、数えで17歳になった若者が大人への通過儀礼として奉納する。
「厳島」「大仏供養」「石橋山」の3曲が伝わり、いずれもせりふ中心の語り芸。中世芸能の形を残す無形遺産として、文化庁提案の14件に盛り込まれた。
保存会の徳谷寿明会長(70)は「戦争中は若い者がおらず、年寄りが代役を務めたと聞いている。登録は名誉なこと。欠かすことなく伝えていかなければならない」と気持ちを新たにする。
8月以降の毎週土曜日、同神社の参籠所で稽古が行われ、保存会のベテランがマンツーマンで指導する。せりふには独特の節回しがあり、掛け合いで約1時間半の内容はすべて暗記だ。
今年の演目は「厳島」。平経盛を務める県立山辺高校2年、今北祐貴君(16)は「部活もあるし、覚えるのは大変」と懸命に台本と向き合っている。
「もっとゆっくり余裕を持って」「そんでええ」。指導は真剣そのもの。「最初はどうしてという思いもあったけど、ここに生まれた以上は決まりです」と今北君。
演目は8~9人で演じられるが、最近は20歳を過ぎて出演することも多い。県外の大学に進学し、稽古にほとんどこれないメンバーもいる。30年近く指導を続けてきた中辻圭弘さん(57)は「登録されれば、あらゆる方面から注目され、不安もある」と話し、「上深川の者はみんなやってきたこと。若者が減ればカムバックも考えていかねばならないだろう」。
今年は見学者の増加が予想される。クライマックスの「フシヨ舞」を舞う県立山辺高校3年の奥西柾貴君(17)は「習ったことを集中してやるだけです」と淡々と話した。
▼ 記事の詳細は本紙をご覧ください
購読のお申し込み