漢方診療日記

第45回 健康に生きるコツ - 四季を感じる力-環境に合わせて生きる

私が専門の漢方医学の古典の一つに『黄帝内経(こうていだいけい)』がある。大きく言えば「環境に合わせて生きるのが健康に良い」というような内容だ。春は芽生えの季節。陽気に満ちあふれ、いろいろなものが、外に出ていくような季節だ。だから、4月から新学期が始まるようにしているのだろう。


秋からは、新しい分野に手を伸ばそうという感じではなく、少しずつ動きを少なくして冬眠、家の中で過ごす時間が長くなるイメージだ。


このように、みんなが自然に持っている四季の感覚に合わせて生きると無理がない、つまり病気になり難い、というわけだ。ただ、最近、多くの人の四季を感じる力が失われているように感じる。


山の中の禅寺で僧侶は、早朝4時に起床し、靴下も履かず草履(ぞうり)で過ごす。2月にそこに行った時は、全員の足が真っ赤で、しもやけになっていた。みな、外でも靴を履かないので、指の色が見えてしまう。


そんな彼らは、私より早く季節を感じているようだった。厳しい環境の中、肌で気温や陽気を感じている。


私も自転車で山を登り降りする。そんな時、自転車の温度計をいつも見るが、高度が上がるほど気温は下がる。ひどい時には、下界と10℃も違う時がある。


最近、同じ3℃でも、明らかに身体が温かいと感じる。1月、2月は刺すような3℃が、今は前月と比べ、温かく感じるのだ。


自然と向き合い、厳しい環境で、人は感覚が鋭くなるのかもしれない。総合的に、温度以外の要素が身体に優しく感じるのだろう。私も都会では、少し遅れてでしか季節の変化を感じられない。


先日、禅寺の雲水さんたちと編集者さんと禅寺で話をしていたら、編集者さんだけが「春が来ているのを感じていない」と言うのだ。


この編集者さんの職場は都会だ。空調の効いた職場、アスファルトの上を厚いソールの革靴で歩く。移動の電車も空調がついている。季節の変化を感じられないのも納得できた。


食による体調の変化を感じる力も、同じだと思う。たまに飢餓感を感じる程度の修行をする僧侶から、水が甘い話を何度も聞いた。また、食品が身体に入ると身体が変化するのが分かる、という。もちろん、その編集者さんは、仕事に影響しないように食事を定期的に食べ、空腹感や飢餓感とは無縁の世界で生きている。食べ物が身体に及ぼす影響も感じない、と言っていた。


人間の色々(いろいろ)な欲求を満たす方向で、文明は発達してきた。しかし、足りない状態が存在する方が、自然や自分の身体と話が出来、その結果、「地球と自分はひも付きだ」と実感する。それが健康に生きるコツなような気がした。

ウェブ限定記事

よく読まれている記事

  • 興福寺中金堂再建記念 現代「阿修羅」展 図録
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • Tour guide tabloid COOL NARA
  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介

奈良新聞読者プレゼント

「歌麿とその時代展」の招待券

喜多川歌麿「青楼三美人」 錦絵大判 寛政4―5年ごろ(1792―93ごろ)
提供元:パラミタミュージアム
当選者数:5組10人
  • 奈良マラソン
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • バナー広告のご案内
  • 奈良新聞シニアクラブ
  • 奈良新聞デジタル
  • ならリビング.com
  • 特選ホームページガイド
  • 奈良新聞社 採用情報
  • ならどっとFM78.4MHzのご紹介