漢方診療日記

第42回 経営者の漢方 - 集団を率いる「気力」

67歳・男性、上場企業の代表取締役―。


妻の知り合いが、私に以前かかったことがあることから来院。主訴は「元気が欲しい」。


1年前から疲れやすかったため、大学病院を受診し、全身の精密検査をしたが、多少糖尿病を示唆する結果が出たものの、食事療法で対応できる程度の軽いものだった。それ以外は異常がなかった。


精神科にも回されたが、睡眠薬を処方されただけで、「翌日、頭が『ぼーっ』とするから」という理由で、今は処方された薬を飲んでいないらしい。


初診時は話してくれなかったが、数回診察後、少しずつ本音を語ってくれた。最近、「人と会うことが苦痛だ」「電話を取ることも苦痛だ」「メールの返信も、つい後回しにしてしまう」という。


しかし、仕事は外から見て普通にこなしているとし、仕事の評価も高いという。ただ本人は、苦痛の中で仕事をしていたとのこと。


漢方薬を処方して2カ月でよく眠れるようになり、4カ月後には、自然に人と話ができるようになった。現在も通院中である。


企業のトップは、ほとんどが、「心のケア」のためにやって来るのだ。もちろん、悪性腫瘍(しゅよう)や難治性の皮膚疾患など、現代医学で来る人もいるが少数派だ。


「心のケア」とは、何となく気力が出ない▽人と会うのにエネルギーがいる▽昔より気疲れが多い▽身体が疲れる▽睡眠を若い時のように取りたい―などだ。


「精神科を受診し、薬をもらうのは抵抗がある。漢方なら」と思って紹介で来院する人が多い。経営者仲間から聞いて「自分も最近、気力がない」と思って、紹介してもらうケースがほとんどだ。


社員の時代は、ペーパーワークなど作業の部分が多かったが、現在役員になってみると、人と会って物事を決めたり、相手を説得して動きを止めたりするなどの仕事がほとんどだ。存在感で相手を勇気づけて動かしたり、時には威圧し、動きを止めるようなことをしているらしい。


いわゆる「念」を使うような仕事が多くなると、皆口をそろえて言う。「国や業界団体と会って話をつけるのが辛かった」などと、日常的に漢方外来で語られている。


人は集団になれば順位ができ、好き嫌いができ、それをトップは統率していかなければならない。そんな中で持続的にトップとして大きな集団を率いていく「気力」は、仕事に大きな力をもたらすのだろう。


漢方の世界には「気血水」という概念がある。このような状態では、「気」を中心に補うことを心掛けている。

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