漢方診療日記

第41回 病名が分からなくても - 想像以上のストレス

漢方医をやっていて気付くことがある。病名が分からない人が、意外に多いということだ。「病名が分からないが診(み)てくれるか」という問い合わせもあったぐらいだ。もちろん、診ると答えた。


現代医学では、色々(いろいろ)な病気の原因や病態をパターン化し、それぞれの対応として治療が存在する。そのため、そのパターンにない場合、医者は困ってしまう。現代医学では、病名が分からなければ、治療は進められない。


皆さんも病院に行くと、まず検査されることが多いと思う。「お腹が痛い」といって病院に行けば、まず血液検査、レントゲン、場合によっては便潜血検査や大腸カメラに進むことがある。そして、検査結果を見て、潰瘍(かいよう)性大腸炎の検査結果と合っていれば、その診断がつく。そして治療が始まる。


病名と合うパターンの検査結果がなければ、再検査。そして分からなければ、再検査、経過観察か、症状を止める対処療法となることが多い。


こんな例がある。57歳・男性、職業・医師―。


数年前から躯体(くたい)を中心に、チョコレート色の直径1センチ前後の斑点が出だした。冬の乾燥時に悪化する痒(かゆ)みがあり、放置しておくと、顔面に出だしたため、家人の勧めで皮膚科専門医を受診した。


しかし、原因が分からず、「特別な治療法はない」と言われ、保湿クリームで対応していた。だが、発疹(ほっしん)が全身に広がったため、私の外来に来たのだ。


同業者なので、やり難かった。ちなみに、漢方外来には、同業者つまり医者の患者が他科よりも多い印象だ。治療している本人は、現代医学の限界を知っているのかもしれない。


東洋医学では、病名が分からなくても治療ができる。今回の場合でも、四診(東洋医学の診察の方法=望診、聞診、問診、切診)の後、証(四診で判別される身体の状態のパターン)をたてて、煎(せん)じ薬で治療した。


2か月の治療後、少しずつ褐色班(かっしょくはん)の数は減っていった。まだ、皮膚症状の全部はなくならないため、現在治療中だ。この先生は自分が飲んでみて漢方が効いたため、漢方を勉強し始めたようだ。


漢方は、病名が分からなくても治療ができた例である。患者さんにとって病名が分からない、それによって治療方法が決まらないことは、想像以上にストレスがかかる。


こんな時には、漢方薬を処方しなくても、現代医学の検査結果を待ちながら、簡単な食事療法を教えるだけで精神的に楽になるし、身体にも良い影響が出るのだ。

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