漢方診療日記

第38回 効かない葛根湯が効く人 - 若く体力がある場合

「葛根湯(かっこんとう)」を飲んだことがあるだろうか? 葛根湯は漢方の代表格で、漢方を飲んだことがない人でも、名前くらいは知っている。


市中の開業医の8割以上で漢方薬を処方している現在、どこかで漢方を飲んだことがある人がほとんどであろう。
でも、葛根湯が良く効いて風邪が治ったという人は、あまり聞いたことがない。


以前、医学部の漢方の授業を行った際、学生全員に「漢方薬を自分で飲んで良く効いた経験があるか?」と聞いたことがあった。その結果、「漢方が良く効いた」と答えた割合は1割もいなかった。


医学に興味がある医学生でも、漢方はあまりシャープに効かない印象を持っているのだ。漢方は証(それぞれの漢方に効くパターンの様なもの)に合わなければ効果は出ない。


65歳・女性―。ひと月以上続く咳(せき)、微熱、倦怠(けんたい)感があり、近医で現代の総合感冒薬を1週間分処方された。


しかし、症状が改善することはなかった。その後、医療機関に行かず自宅で療養していた。


時間が経過しても症状が変わらないため、街の薬局に行き、そこで漢方が良いと言われ、葛根湯を勧められた。3カ月間葛根湯を内服したところ、風邪症状は治らず、逆に食欲不振など胃腸障害や血圧上昇を自覚し、内服を中止した。


その後、風邪症状が改善しないため、私の外来に来たのだ。


葛根湯が効くのは汗が出なくて、頭痛、悪寒(おかん)、肩こりを伴う人でかつ、比較的体力がある人に限られる。葛根湯が効く疾患としては風邪だけではなく、他の炎症性疾患、肩こりなどの疾患だ。


葛根湯は2千年前に書かれた『傷寒論』が原典であるが、その中には、「太陽病、項背強バルコト几几、汗無く、風ヲ悪ムハ、葛根湯之ヲ主ル」と記載がある。


つまり肩、首、背中周りに「こわばり」があり、汗がなく、悪寒する場合に葛根湯が効く、と書いてあるのだ。
また、この処方は若い、体力のある人に効く処方で、私は60歳以上の人に効いた経験はない。


また、「麻黄(まおう)」が入っているため、血圧が高い人や胃腸が悪い人などは、副作用が出るので避けなければならない。


前述女性の食欲不振や血圧上昇は漢方を中止した後、すぐ改善した。漢方薬の副作用の特徴は、ほとんどが漢方の中止ですぐ改善することだ。


その女性には「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」という、体力のない冷えた人用の処方をしたら、「身体が温かくなった」と言い、しばらくして風邪は治った。漢方の風邪薬といっても、色々(いろいろ)ある。
みんなに葛根湯が効くわけではない。

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