漢方診療日記

第37回 漢方で痩せる - 不可欠な心の安定

漢方薬の世界では、心を大切にする。


例えば風邪をひいても、ただ体調が悪いと感じるだけの人もいれば、「自分は身体が弱い」と落ち込む人がいる。この2つのタイプでは、それぞれ違う漢方薬を選ぶことになる。体調の狂いは同じでも、そこから脱出させるために免疫をつけさせるには、人によって漢方を使う方法が違うということだ。


これはなにも病気の場合だけではない。今日、雑誌の取材があった。「漢方で痩(や)せる」という特集を健康雑誌で組みたいからアドバイスをくれ、とのことだった。


女性の編集者が、話を聞きに来た。巷(ちまた)では、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」が肥満に良い、などと書かれている。


私の患者さんにも、来院前にこの手の広告を信じて実行してきた人が何人もいたが、「ほとんど効果がない」と言っていた。恐らく、漢方が効くパターンの証が合ってないためなのだろう。


漢方は、症状だけを捉(とら)えて飲んでも、なかなかシャープな効果は期待できない。先ほどの風邪と同じだ。同じ風邪ひきの患者さんの中にも、色々(いろいろ)な年齢、体質の人がいる。それぞれのタイプを漢方診療で見つけて、適切な漢方薬を処方するとよく効くことになる。


身体が冷えて代謝が落ちているような人には、漢方薬で身体を温めることで対応すると、特に今からの冬の季節は身体が楽になり、自ずと運動量が増えて痩せていくことが多い。


また、ストレスで食べ過ぎている人もいる。人は危機に直面する、つまりストレスがかかると防衛のため、たくさん食べて栄養を貯める傾向にある。食欲が増える。このような人には、ストレスをためにくくする漢方薬を処方する。ストレスがなくなれば、自制する心も強くなり、食欲を我慢できる。


そのストレスにも色々あり、漢方では対応も色々なものに分類されている。神経質な性格の女性がイライラしている場合と、気の強い女性が職場でいじめられてストレスを感じる場合は、全く違う処方になる。西洋医学では同じストレスでも、漢方では元の性格やストレスの種類を考えて治療するのだ。


その他、紙に自分の状態を毎日観察して書いてもらうことも行っている。その日、何を食べたかだけではなく、お腹が空いたときにどのように感じたか、また食事を食べてどう思ったか。また、治療以前の感覚と今とどう違うか、などを書いてもらう。


このように心を大切に治療すると、気血水が整う方向に向かい、自然に痩せていく。またリバウンドし難くなるという。医学的には、運動を頑張ってするより、食事制限の方が痩せる。心の安定は、ダイエットに不可欠だ。


ただ前出の女性編集者は、「これを飲んだら痩せる」といった内容を期待していたようで、「複雑すぎて特集はお蔵入りになるかも」と言われた。


当たり前だが、人の身体は複雑だ。

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